ブランドと向き合い抜くロゴデザインの裏側。株式会社デパートのロゴリニューアル秘話

2025.05.10
目次

2020年、会社設立から5年経過したデパートが、ロゴのデザインを改めました。

なぜロゴのリニューアルを行なったのか、そのプロセスや設計はどのように行われたのか、実際の制作はどのようなものだったのかー。

担当デザイナーの伊藤 高生と、取締役のモチマスミサにて、制作秘話を振り返り、語らいました。

なぜ会社設立から5年のタイミングでロゴのデザインを変更することになったのか

モチマス:

設立して5年という節目に、企業理念、VISON、MISSON、VALUEを改めました。設立からの過程で、会社の規模も大きくなり、仲間も増えていきました。

デパート設立当初に掲げていた企業理念、VISONやMISSIONやVALUEは、その成長の中で達成されたものもあれば、それを引き継いで、より追いかけなければならないものも見えてきました。そういった中で、当時経営陣にてまず、企業理念、VISON、MISSON、VALUEを改めました。そして、それにあわせてロゴやオフィシャルサイト、他ブランドのビジュアルを刷新する運びとなりました。

ロゴ制作のプロセスや設計はどのように行われたか

モチマス:

プロセスとしては、担当デザイナーの伊藤さんから役員全員にヒアリングを行ってもらい、コアバリューをまとめてもらうところからはじめました。そして、そのコアバリューやブランドのフレームをもとに、かなりの数のパターンを提案してもらい、ブラッシュアップしながら進めていきました。

考え方としては、見た目が良い・悪いという印象で進めるのではなく、背景にある「ロジック」を重要視して、設計してもらいました。デパートらしく、とことん細かなロジックまで粘って粘って、粘りまくって。笑

いろんなことの、いいところも、よくないところも、残り香のように繊細なものまで、緻密に積み重ねて、研ぎ澄ませていくことに向き合う。デザインは伊藤さんにお願いし、共に考えデパートのブランドと向き合い抜いていきました。

ブランドのコアバリュー(本質的価値)

伊藤:

デパートの新しい企業理念として、VISION、MISSION、VALUEがこのように定められました。

デパートの新しい企業理念、VISION、MISSION、VALUE

こちらを元にロゴを制作することになりました。しかしこのままだと要素が多く、どこの部分をロゴにするのかを考える必要がありました。そこで、まずは情報を整理するところからはじめました。

ロゴの構成要素として何を取り入れるべきか、先ほどの企業理念に加えて、役員の方々からヒアリングを行いました。今のデパートについてだけではなく、将来どうなっていきたい、という未来のことも含めてお話を聞き、それらを抜粋してまとめました。

これでもロゴとして表現するにはまだまだ要素が多いので、この中で一番強くロゴで表現したいところは何かを突き詰めていきました。そして、コアバリューである「イイDesign(Good Design)」と定義しました。

デパートのブランドフレームワーク

デパートの仕事の中でコアになる部分は、VISIONの「イイDesign」であり、MISSIONの「Good Design」であるということで、ここを最も強く表現するロゴを制作することになりました。

表現のロジック設計

伊藤:

「単純に見た目がどうか」というところよりも、「どういったロジックで設計されているか」という部分を重視して制作を進めました。そのため、まずはデザインを行う上での根本的な企画のロジックについて、案を出していきました。

【実際に出した提案一覧】

ロゴデザインの表現ロジック01

ロゴデザインの表現ロジック02

「図形のパズルで表現」や「道筋を表現」などさまざまな提案をし、その中から、この表現が一番良いのではないか、というものを役員の方々に選んでいただきました。

それが、「ガイドラインで表現」と「グリッド(方眼)で表現」の2つでした。

ガイドラインやグリッドを用いて設計していくことで、デザインや設計が表現できるのではないか、ということでこの2つを軸にロゴのデザインを進めることになりました。

シンボルマークのデザイン

伊藤:

どういったモチーフで「イイDesign」を表現するか試行錯誤しました。

例えば、「Goodを表現」では、Facebookのいいねボタン(サムアップ)のような親指を立てた表現がGoodを表現していると考え、親指を立てているように見えて、かつ、小文字の「d」も意識したデザイン案を出しました。

また、「デザインの道具の表現」では、紙とペンをモチーフにした案やコンパスをモチーフにした案などを出しました。

この中の、DEPARTの「D」のマークをひっくり返すとGoodの「G」のマークになるものと、DEPARTの「D」に見えるマークを90度回転させるとスマイルマークに見える、笑っているということは何かイイことを表現している、という2つの案で進めていくことになりました。

【実際に出した提案一覧】

シンボルマークのデザイン

タイポグラフィのデザイン

伊藤:

「グリッドとガイドラインを使った設計とは」という部分を軸に、タイポグラフィの制作に入りました。これはそのバリエーションで、ラフ案になるのですが、グリッドと円を使ってみたり、そのバランスを変えたり、正方形をベースにして作ったりしました。

そして、こういった提案をしていく中で、「黄金比」を用いた表現にたどり着きました。

【実際に出した提案一覧】

タイポグラフィのデザイン

黄金比というのは、紀元前から、ギリシャの建築物の設計などにも用いられてきた比率で、自然界にも存在し、カタツムリの渦巻きもこの黄金比をつなげたスパイラルになっています。人間界でも長い間美しい比率として使われていて、有名なところでは、Twitter社の青い鳥も黄金比のガイドラインを用いて作られています。

この「黄金比を使ってタイポグラフィを作っていく」という案で決定しました。

ロゴの最終精緻

伊藤:

決定したタイポグラフィとシンボルマークを細かく調整していきました。2つに絞ったシンボルマークでしたが、「このままではDに見えないのではないか」という懸念もあり、その中間のようなデザインなどいくつかのデザインパターンを出しました。

【実際に出した提案一覧】

ロゴの最終精緻

タイポグラフィに関しては、長方形をもとに制作を進めていくと、うまくバランスが取れず、黄金比もあまり使えませんでした。そこで、今までの大文字の「DEPART」から小文字の「depart」に変更することで、新たな印象に変えることもできますし、黄金比だけで設計することができるようになりました。この時点で、長方形は使わず円のみを使うように変更しました。

こちらがBeforeとAfterです。

ロゴの最終精緻before&after01

ロゴの最終精緻before&after02

タイポグラフィに関しては、これでほぼ決定となりました。

文字サイズとシンボルマークのバランスや、シンボルマークに対してどこに文字を置くかなどのバリエーションを出しながら、どのバランスが良くて、どのシンボルマークが良いのかを選ぶ材料としました。

【実際に出した提案一覧】

文字サイズとシンボルマークのバランス01

その結果、スマイルの案ではなく、「D」を回転させると「G」に見える案に決まりました。そこからさらに細かい調整を行い、シンボルマークの幅を2種類まで絞りました。

文字サイズとシンボルマークのバランス02

そして、この2種類に絞ったシンボルマークをどちらにするか決定するにあたって、バランスの検討のために、こういったバリエーションをいくつも出し、ガイドラインがあるものやないものなど、さまざまな状態を役員の方々に確認していただきました。

文字サイズとシンボルマークのバランス03

こちらが、”おおよそ”フィックスしたロゴです。

”おおむね”フィックスしたロゴ

まだまだ粘ります

モチマス:

おおむね、なんだよね、おおむね。

伊藤:

はい。ここからがデパートの粘りですね。笑

これでほぼ完成しましたが、そこからさらに非常に細かい微調整をかけてブラッシュアップを行いました。

これ以降の部分に関しては、目で見てもあまりわからないレベルなのですが、例えば、小さくして印刷した時に潰れがないか、目で見て微妙な違和感がないか、というような微調整を行いました。実際に左右真ん中に配置していても、人間の目で見ると錯覚でバランスが取れていないように見えることもあるため、そういった微調整をしながら選びました。この部分に関しては、僕の方で「これだ」というものを判断して決めていきました。

【実際に出した提案一覧】

粘りの最終調整

そして、最終的にロゴが完成しました。

こちらがロゴの完成形です。

FIXしたロゴ

採用されなかった愛しいアイディアたち

採用されなかった愛しいアイディアたち

伊藤:

様々なデザインパターンで考え、役員の方々に見せました。

みなさん決して元のロゴにも愛着があり、「こんなロゴに変えたい!」ということではなく、理念やMVVのリブランディングが根本的な目的であったために、ロジックに従いつつもいろいろな可能性を探るという意味で、形になっているのかいないのか分からないようなものから、手描きのスケッチも含めて色々と模索し、形を探っていきました。

手描きのスケッチ

デザイン後記

伊藤:

心が折れそうになる瞬間は無数にありました。むしろ折れました。笑

今回お見せしたプロセスというのは、途中からモチマスさんに設計の手法を整理していただいた、という経緯があります。その前にも提案をしていたのですが、なかなか決まらずに苦労しました。

しかし、その後にロジックを決めて制作していったことにより、無闇に進めていた時よりも、着実にゴールに近づいていっているということを感じました。

モチマス:

制作時間も気持ちも、たくさんかけて、デパートのブランドを体現している、と経営陣も制作者も全員が納得できるものができました。さまざまな表現を検討していく中で、ロジックをもとに設計されたものではあると同時に、機械的ではなことを目指したかったのです。初見でパッと見ては気がつかないだろう場所にも、細やかな人の手や目や、積み重ねた情報や感情感覚が反映される、洗練されゆく奥行きさがアウトプットに圧縮されていく、デザイナー伊藤さんの仕事は素晴らしいものでした。

まとめ

ロゴをリニューアルしてからさらに5年経ち、今年で10年目を迎えた節目に、デパートはオフィシャルサイトをリニューアルしました。ロゴやサイトリニューアルに関わるメンバーだけではなく、デパートに関わる全ての人が今も日々、デパートのブランドに真っ直ぐ向き合い、業務やコミュニケーションの細部にまでそのブランドを浸透していく施策を考え悩み、トライアンドエラーを繰り返し続けています。その一つの形が本記事でご紹介できていれば幸いです。

ブランドは、定義し表現したら一旦完了、ということは決してなく、何度も何度も使い続け考え続けることで、生きて輝きが増していくものだと実感しています。

もう10年、まだ10年。これからももがき苦しみ、思いっきり楽しみながら、デパート一丸となってブランドを育てていきます。

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