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ロゴ制作を公開 | 方波見牧場 精肉ブランド「やまの華豚」
プロジェクト全体の流れ
こうしてフロー図で見ると、ロゴ開発だけでもその工程はなかなかの数があります。そう、ロゴ開発はとても時間とパワーと根気が必要な仕事なのです。
当記事ではまず、ヒアリングからブランド名開発の工程について、ロゴ開発にはなくてはならない重要な情報がありますので要点のみをまとめてお伝えしていきます。
ヒアリング
リニューアル背景
方波見牧場の精肉ブランドは元々、「常陸野栗豚(ひたちのくりぶた)」というブランドで主に飲食店向けに販売を行ってきました。
飲食業界全体もコロナ禍の中で影響を受け、方波見牧場も精肉の販路や見せ方を模索していく必要がありました。
本格的にECモールにて「常陸野栗豚」の家庭用販売をはじめた結果、その美味しさに一般のお客様から好評を得ることができたのですが、課題が浮かびあってきたのです。
「一般のお客様と深くコミュニケーションをとる中で、デュロック純粋種「常陸野栗豚」の理解をより簡単に深めて、より親しみを持ってもらえるような、ブランドに定義し直す必要を感じている」と。このブランドの再定義に伴い、方波見牧場がデュロック純粋種を生産する想い、商品の特徴を、一般のお客様(ターゲット)に直感的に感じていただくと言うことが、本件のミッションとなりました。
現状の改善したい点をヒアリング
ブランドの再定義に伴い、現状のネーミング・ブランドについての改善したいポイントをヒアリングしました。
- 読みにくい、書きにくいという事実を変えたい
- ロゴなどによるデザインでを認知を広げたい
- 細く長く愛してもらえるブランド名・ロゴにしたい
- 加工ブランドの「鉾田ハム」の愛らしさのあるブランディングはあってほしい
- 鉾田ハムとのブランディングのバランスも適切にありたい
上記の改善したい点を踏まえつつ、方波見牧場がデュロック純粋種を生産する想いや商品の特徴をどう伝えていくか検討していきます。
リサーチ・情報整理
ヒアリングした情報から、さらに細かいリサーチを行ない得た情報を整理していきます。
リサーチは、方波見牧場や現状扱っているブランドについて、またそれを取り巻くマーケットや競合ブランドについてなど様々な角度から行います。
方波見牧場について
茨城県にある方波見牧場は、代表の方波見真人さんが「デュロック純粋種の育成と提供により様々な食体験を生み出し、世の中に貢献していきたい」という想いをもって運営しています。お父さんが始めたデュロック純粋種の生産を真人さんが再開。真人さんが幼いころ食べた時に感じた美味しさ、感動を、同じようにお客様と共有できればと真人さん。
その想いの中には、
「デュロック純粋種の育成と提供により様々な食体験を生み出し、世の中に貢献していきたい」
「デュロックが幸せに育って欲しい」
といった、生産者ならではの願いが込められていました。
「デュロック純粋種」という品種
先ほどから「デュロック純粋種」というキーワードが度々登場していますが、耳にしたことがある方はあまりいないかと思いますので、リサーチ結果も踏まえ簡単に説明しておきます。
日本ではたくさんのブランド豚が世の中に出回っており、その数は約600に近いと言われています。昨今ではスーパーでもご当地のブランド豚を目にする機会が増えてきましたが、その約600ある豚肉ブランドの8割近くが、一般的にご家庭用に購入されているであろう「三元交配豚」と言われる豚で、その飼育方法や様々なエサを変えて特色を出し、それぞれにブランド化し販売されています。 三元交配豚は、L=ランドレース種、W=大ヨークシャー種、D=デュロック種の3種を掛け合わせているものがほとんどです。
それぞれの種類の特性を掛け合わせ、大量にそして、安定的に豚肉を生産するために生まれた種類として、日本市場では多く出荷されているのです。
- L=ランドレース種 繁殖能力に優れている
- W=大ヨークシャー種 産肉性、繁殖性が良くバランスの取れた豚
- D=デュロック種 肉にサシが入り旨味も濃い
デュロック種は上記の特徴にあるように、「美味しさのデュロック種」と言われ美味しく上質な肉質と歩留り(製造業など生産全般において、原料や素材の投入量に対し、実際に得られた生産数量の割合のこと)も良い品種ということで、もっと多く目にしても良いのでは?と思うところですが、実は繁殖能力が低く、そのためにデュロック純粋種をお肉として生産している養豚家が少ない希少な豚なのです。方波見牧場では、餌や飼育方法に徹底的にこだわり、愛情を持って育てています。
飼育方法
ストレスを極力なくすこと
豚はストレスに敏感で、温度や他の豚との生活環境などあらゆる事象に影響を受けてしまいます。 方波見牧場の場合は、兄弟ごとに部屋を分けのんびり暮らしています。 抗生剤などの医薬品はほとんど使う必要がないといいます。
餌
麹を与える
豚肉を大きく育てるためには、高たんぱくで、エネルギー源が豊富なエサを食べさせ続けなければなりません。カロリーの高い食事をとり続ける…つまり、人と同じく胃や腸にストレスを与えます。 麹発酵飼料のTOMOKOを与えることにより、腸内が河内菌により活性化され、エネルギー源豊富な飼料がきちんと消化分解され、豚はおだやかでいられるのです。
肉質
肉質は、繊細で優美。脂と赤身のバランスがよく、ロース、肩ロースはもちろん、モモにまで、サシが入る見た目も美しい豚肉です。口に入れた後も、ナッツのような脂の香りを楽しむことができます。程よく弾力があり、噛めば噛むほどに濃厚な旨味が滲み出てくるよう。脂はサラサラとして甘みがあり、食べた後も胃もたれせず女性にも人気があります。
既存ブランドの研究
デュロック純粋種の特徴について理解した上で、現状方波見牧場が持っているブランドの整理をしておきます。方波見牧場が持つブランドには、精肉ブランド「常陸野栗豚」と、加工肉ブランドの「鉾田ハム」があります。改善要望のセクションで記載がありましたが、今回は精肉ブランドの里ブランディングではあるものの、「鉾田ハム」とのバランスも考慮したいというご要望もありましたので、リサーチした情報まとめておきます。
常陸野栗豚
- デュロック純粋種
- 肉質と歩留りも良い品種
- 脂と赤身のバランスがよく、ロース、肩ロースはもちろん、モモにまで、絹のようなサシが入る
- 程よく弾力があり、噛めば噛むほどにじわっと濃厚な味
- おいしさの秘密は「脂」 脂はナッツのようないい香りがし、甘味がある 脂がサラサラとしていて胃もたれせず、しつこくないため女性の方にも好評
- 繁殖能力が低く、デュロック純粋種を生産している養豚家は少ない
鉾田ハム
- デュロック純粋種を使用
- 調味料は塩と砂糖のみで、素材の味
- 添加物は必要最低限(添加物のないハムはほぼない)のため、希少価値が高い
- 一つ一つ手作りで製造
- きめ細かい舌ざわりは他では真似できないおいしさ
戦略企画
ヒアリングと情報整理を終えたあとは、課題の抽出を行い課題に対しての戦略を立てていきます。
リブランディングと聞くと、多くの人は名前の変更やロゴの変更など見た目の変更とまずイメージすることが多いかと思いますが、ブランドの再構築にとって本質的に1番重要になる核となる部分は、課題を見極め戦略を立てそれが実際に使われていくブランド活動を設計することです。
昨今ではSNSやメディアの台頭により情報が溢れかえっている中で、ロゴやパッケージが素敵なだけでは人の気持ちは動かないといえるでしょう。このブランドが、受け手にとって何をもたらしてくれるのかということや社会に対して何を貢献できるのかということを定義し、ブランドを伝え続けること= ブランド活動が何より重要なのです。このブランド活動を行う手段の一つがロゴになるのです。
本件の戦略の中には、豚肉ブランドとしての広告的見せ方はもちろんのこと、販売・販路についてや生産に至るまでも含めたマーケティング戦略について当記事ではその設計部分は長くなってしまいますのでまた別の機会にお伝えできればと思いますので、簡単に全体の戦略における構造部分だけお伝えできればと思います。
ブランドの本質的価値(コアバリュー)
今まで得てきた情報の中からブランドを構成する要素をまとめていきます。いろいろなやり方がありますが今回は、社会性・情緒性・ブランドのキャラクター・ターゲットを構成し、ブランドの核となる本質的価値を見出していきます。
コアバリュー
方波見牧場の想いに共感いただいたお客様と、デュロック純粋種を通じたコミュニケーションにより、特別な食体験を生み出す。
この構成要素とそこからなるコアバリューを体現するために使われるシンボルが、ロゴマークになります。
コアターゲット
ブランドを構成する事実的要素とそれを取り巻く環境や競合をリサーチし、ブランドのターゲットかを明確にしました。今回のリブランディングの目的としては、(toBも範疇ではあるが)まずはtoC需要に応える・toC需要を育てることがメインになるため、以下のように消費者ターゲットを定めました。
消費者ターゲット
- 意識感度の高い女性がメイン しなやかで自立した女性
- モノも含めたコト主義
- こだわりのある時間・体験を大事にする
- コロナ下ではじまった”おうち時間”で、こだわりの・特別な料理を作る・食べる
- 自宅での消費分とは別に、ハムなどの加工肉は贈答用にも購入される
この後のロゴ制作のためにも、ここからより詳細にペルソナを設定したりと、ターゲットのマインドを研究も同時に必要になります。
ターゲットとのタッチポイント
構成要素のマップ上には記載していませんが、上記で設定したターゲットが、どこでこのブランドに触れるかのタッチポイントや媒体を洗い出しておきます。ターゲットが目にする場所やタイミングによっても、ブランドを表現する際に重要視するべきポイントが変わってくるためです。今回はメインが梱包パッケージではあるものの、リブランディング後の戦略としてSNSやWebの活用も視野に入れたタッチポイントを想定しています。
タッチポイント(媒体)
- 梱包パッケージ(包装
- SNS
- Webサイト(ブランドサイト・ECサイト)
- イベント看板
ブランド名開発
キーワード抽出とブランド名策定
今回は社内チームで案を出し合い、ブレストして行く方法を取りました。
まずここまでヒアリング・リサーチした情報から、キーワードを抽出した上でざっくりとしたグルーピングを行いました。そうすることでブランド名で伝えるべき、感じてもらうべき情報や雰囲気世界観をと捉え、その強弱を考えながら自由にブランド名のアイデア出しをすることができます。
実際のアイデア出しでは、何度もMTGを行こないました。XDの共同編集機能を使ってそれぞれメンバーが入力しながら会話を重ねていきました。
方波見牧場の情報整理で定義した方波見牧場自体のコアバリュー「想いに共感いただいたお客様と、デュロックを通じたコミュニケーションにより、特別な食体験を生み出す牧場でありたい。」、その”特別な食体験を生み出す”というキーワードに重きを置きながら、精肉の特徴を伝えられるブランド名を模索し、上図の赤字にしたアイデアに絞り込みました。
絞り込みんだ上で、再度アイデア出しを行う。これを何度か繰り返し、方波見牧場の方とすり合わせを行って決まったブランド名が「やまの華豚」です。
ロゴの制作工程へ
当記事では、ヒアリングからブランド名開発の工程を簡潔にお伝えしてきました。これらの工程を経て、いよいよブランドを伝えていくシンボル、ロゴの制作工程に移っていきます。
ロゴ制作目次
- ロゴ制作を公開 | 方波見牧場 精肉ブランド「やまの華豚」
- ロゴ制作プロセス①表現企画
- ロゴ制作プロセス②シンボルマーク設計
- ロゴ制作プロセス③タイポグラフィ設計
- ロゴ制作プロセス④ロゴ全体の最終精微
- ロゴ制作プロセス⑤カラー設定
- ロゴ制作プロセス⑥使用の際のガイドライン設定・ロゴガイドライン資料の作成