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【2024年4月義務化?】ウェブアクセシビリティ 対応しないと発生するリスクや対策のポイントを紹介
2024年4月に「合理的配慮の提供」が義務化
2024年4月から、障害者差別解消法の改正に伴い、これまで民間事業者では努力義務だった「合理的配慮の提供」が義務化されます。
「ウェブアクセシビリティが義務化される」という誤った表現をよく見かけますが、この改正により義務化されるのは「合理的配慮の提供」であり、ウェブアクセシビリティが義務化されるわけではありません。
しかし、ウェブアクセシビリティの重要性がより一層増すことには変わらず、Webサイトのアクセシビリティ対応は今後さらに求められていくことになります。
ウェブアクセシビリティとは
ウェブアクセシビリティとは、年齢、身体的能力、技術的スキルなどに関わらず、すべての人がWebサイトの情報やサービスへアクセスできるように設計されていること、また、その度合いを意味します。
例えば、視覚障害者のための音声読み上げ機能や、肢体不自由者のためのキーボード操作の最適化などの配慮が含まれます。
アクセシビリティを意識したWebサイトの設計をすることで、多様なユーザーが利用できるサイトになるだけでなく、UXの向上やブランドイメージの向上にもつながります。
ウェブアクセシビリティの基本や、Webサイト制作で活用できるコツについては、以下の記事も併せてご覧ください。
ウェブアクセシビリティの重要性
内閣府が発表している「令和5年版障害者白書」によると、令和5年度における日本の障がい者数は約1160.2万人で、総人口の約9.2%が何らかの障がいを持っていると推計されています。また、高齢者人口の増加に伴い、視覚、聴覚、運動能力が低下する人々の数も増えることが予想されています。
ウェブアクセシビリティに配慮することで、こうした障がい者や高齢者を含む多様なユーザーに対しても、Webサービスや情報を適切に提供することが可能となります。
さらに、SDGsの目標の一つである「10. 人や国の不平等をなくそう」からも、多様なユーザーが公平にサービスを利用できるようにすることは、企業が担うべき社会的責任とも言えます。ウェブアクセシビリティへの取り組みは、法令順守だけでなく、企業の社会的価値を高める意義も持っています。
ウェブアクセシビリティに対応しないと発生するリスク
障害者差別解消法は、差別を解消するための措置として行政機関等や民間事業者に対して以下3つの義務(もしくは努力義務)を課しています。
- 不当な差別的取扱いの禁止
- 合理的配慮の提供
- 環境の整備
これらの中で、ウェブアクセシビリティの対応は「環境の整備」に位置付けられています。 「環境の整備」とは合理的な配慮を的確に行うための事前措置のことで、改正前も改正後も努力義務となっています。
そのため、ウェブアクセシビリティの対応は義務ではなく、違反時の罰則規定もありません。
※ 行政機関等においては、障害者差別解消法とは別に、総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」にてウェブアクセシビリティの対応が求められています。
しかし、ウェブアクセシビリティの対応をしていない(「環境の整備」が不十分な)ことで、Webサイトを適切に利用できないユーザーがいた場合、ユーザーから「合理的配慮の提供」を求められる可能性が高くなります。
そして、ユーザーから「合理的配慮の提供」を求められた際に、適切な対応をしなければ「合理的配慮の提供」の義務を果たせていないとして、トラブルに発展してしまうリスクが存在します。
ウェブアクセシビリティが確保されているWebサイトとは
Webサイトのアクセシビリティが確保されている状態を確認するには、ウェブアクセシビリティのガイドラインで定義されている達成基準を満たしていることが一つの目安となります。
以下では、ガイドラインの種類とアクセシビリティ対応のポイントを紹介いたします。
ウェブアクセシビリティのガイドライン
ウェブアクセシビリティのガイドラインには、W3C(World Wide Web Consortium)が定める国際的なガイドライン「Web Content Accessibility Guidelines 2.2(WCAG 2.2)」や日本の工業規格「JIS X 8341-3:2016」などがあります。
日本国内のWebサイトにおいては「JIS X 8341-3:2016」に対応する場合が多くみられます。 ただ、「JIS X 8341-3:2016」はWCAGの以前のバージョン「WCAG 2.0」と一致する内容になっているため、最新の国際基準のガイドライン「WCAG 2.2」の内容とは少し異なることに注意が必要です。
ウェブアクセシビリティ対応のポイント
ガイドラインには以下4つの原則が定義されています。
- 原則1. 知覚可能
- 原則2. 操作可能
- 原則3. 理解可能
- 原則4. 堅牢
この原則に基づいて、さらに細かい達成基準が定められていますが、ここではアクセシビリティ対応で重要となるポイントを解説します。
原則1. 知覚可能 のポイント
この原則では、コンテンツを視覚的および聴覚的に認識できるようにすることを目指しています。
画像に代替テキストを設定したり、音声・動画などの時間ベースのメディアでは字幕や手話通訳などの代替コンテンツを提供します。
Webサイト内の配色に関しても、文字色と背景色に十分なコントラストを確保したり見分けやすい配色にする必要があります。
また、色や形、大きさ、方向などの感覚的な特徴に依存した表現(「赤い文字は入力必須です」など)はしないようにします。
原則2. 操作可能 のポイント
この原則では、使用デバイスに関わらずコンテンツを操作できることを目指しています。
マウスで操作可能なコンテンツは、キーボードだけでも操作できるようにする必要があります。
入力や操作に時間制限を設けたり、自動的に切り替わるコンテンツは避け、ユーザーが時間を延長したり、自動再生を停止したり、非表示にしたりできるようにします。
また、フォーカスが当たっている要素はそれがわかるようにし、リンク先はリンクテキストだけで判断できるようにします。
原則3. 理解可能 のポイント
この原則では、ユーザーがコンテンツの意味を正しく認識し、必要な操作を適切に行えるようにすることを目指しています。
Webサイトで使用する言葉は、難解な専門用語や省略表現を避けて、できる限り平易な表現を用いて多くのユーザーが理解できるようにします。
また、ナビゲーションやアイコン、操作方法などは、Webサイト全体で一貫性を持ち、予測可能な動作をするように設計します。
入力フォームでは、各入力項目に適切なラベルや説明を用意し、ユーザーが入力ミスをすぐに発見し修正できるように、わりやすいエラーメッセージを提供します。
原則4. 堅牢 のポイント
この原則では、スクリーンリーダーやクローラーなどの支援技術とユーザーエージェントが内容を確実に解釈し、適切に機能することを目指しています。
新たな支援技術やユーザーエージェントが登場したときに既存のコンテンツが適切に解釈されるように、WAI-ARIAやWeb標準などのWeb仕様に準拠した実装を行い、未来の互換性を最大化します。
まとめ
ウェブアクセシビリティの対応は、法令遵守、社会的責任、デジタルマーケティングの観点からも重要な施策となっています。
本記事では、障害者差別解消法の改正に向けた対策やアクセシビリティを確保する上で必要なガイドラインのポイントを解説しました。
ただ、ウェブアクセシビリティの対応は、法的リスクの回避や、表面的なガイドラインの対策がゴールではありません。ウェブアクセシビリティの本質である、誰もがWebの恩恵を等しく受けられるようにするという理念としっかり向き合い、ユーザーの視点に立った改善を続けていくことが何より重要だと考えています。
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