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目次
目次
- この記事で得られること
- 人間中心設計(HCD)とは?システムの使いやすさを追求する開発アプローチ
- 人間中心設計の定義と基本的な考え方
- UXデザインとの関係性
- デザイン思考とのアプローチの違い
- 人間中心設計を支える6つの基本原則
- 原則1:ユーザー、タスク、環境の明確な理解に基づいた設計
- 原則2:設計と開発全体を通してのユーザー参加
- 原則3:ユーザー中心の評価に基づく設計の実施と洗練
- 原則4:設計と評価の反復(イテレーション)
- 原則5:利用者経験(UX)全体への対処
- 原則6:多様な視点と技能を持つチームによる設計
- ISO規格に準拠した4つの開発プロセスと具体的な手法
- STEP1:利用状況を調査し、ユーザー理解を深める
- STEP2:ユーザーのニーズを分析し、要件を明確にする
- STEP3:要件を満たす解決策を具体的に設計する
- STEP4:設計案が要件を満たしているか評価・改善する
- 【デパート実践】どうやって根拠を証明しているのか?
- 1. 認知心理学に基づくデザインの言語化
- 2. 思考発話法による無意識の可視化
- 3. プロトタイプによる操作感の検証
- 人間中心設計を導入する3つのメリット
- ユーザー満足度の高い製品・サービスを開発できる
- 開発の手戻りを減らし生産性が向上する
- 企業のブランドイメージと信頼性を高める
- 組織全体に人間中心設計(HCD)を取り入れる重要性
- 組織として取り組む3つの重要性
- 組織にUX品質を定着させる学習ロードマップ
- 専門知識を証明する資格「人間中心設計専門家・スペシャリスト」
- 資格の概要と受験要件
- 資格取得までの流れ
- 人間中心設計に関するよくある質問
- Q. 人間中心設計とユーザー中心設計(UCD)は何が違うのですか?
- Q.
- Q. プロジェクトに人間中心設計を取り入れる際の注意点はありますか?
- Q. 期間や費用はどのくらい増えますか?
- Q. 人間中心設計のスキルはどのような職種で活かせますか?
- Q. アクセシビリティ対応も含まれますか?
- 確固たる根拠と、その上の、人の心を動かす設計を目指して
- 関連するデパートのサービスをご紹介
Webサイトのリニューアルは、企業のこれからの成長を支える大切なプロジェクトです。だからこそ、「本当にユーザーに喜ばれるだろうか」「使いやすさを実感してもらえるだろうか」という期待と同時に、慎重になる担当者様も多いのではないでしょうか。
多くの人に愛されるサイトを生み出す鍵は、表面的なデザインの美しさだけでなく、その裏側にある設計の根拠にあります。
この記事では、人間中心設計(HCD)という、国際規格(ISO)に基づいた確固たる設計プロセスについて解説します。株式会社デパートが1年をかけて開発・実践した、組織にHCDを定着させるための「独自メソッド」や、人間中心設計スペシャリストの視点を通じ、表面的な「UX」という言葉に惑わされない、本質的なWeb制作の在り方を提示します。
この記事で得られること
人間中心設計(HCD)の基礎知識
― ISO規格に基づく定義・6つの原則・4つの開発プロセスを体系的に理解できるUXデザイン・デザイン思考との違い
― 混同されやすい3つの概念を整理し、正しく使い分けられるようになる「なんとなくセンスで作る」から脱却するヒント
― 認知心理学やユーザビリティテストを活用した、根拠ある設計の進め方を知ることができる組織への人間中心設計(HCD)定着モデル
― 株式会社デパートが1年かけて実践した21時間カリキュラムの全体像と、自社導入への応用ポイントを把握できる人間中心設計専門家・スペシャリスト資格の概要
― キャリアアップを検討している実務者が、受験要件・試験の流れを把握できる
人間中心設計(HCD)とは?システムの使いやすさを追求する開発アプローチ
人間中心設計(Human-Centered Design、HCD)とは、製品やシステムの開発プロセスにおいて、利用者の特性やニーズ、利用状況を深く理解し、設計に反映させる考え方です。結論から言うと、人間中心設計(HCD)は『作り手の思い込み』を完全に排除し、徹底的に『利用者の状況』を検証することで、プロジェクトの意思決定に揺るぎない客観的根拠を与えるプロセスです。その歴史は人間工学の分野にまで遡り、利用者の視点を開発の初期段階から取り入れることで、最終的な製品やサービスの質を高めることを目指します。
デパートでは、これを単なる理論ではなく、「客観的事実に基づく科学的プロセス」と「人間特有の揺らぎを扱う人間学(人の感情・心理・行動の多様性を読み解く学問的視点)」のハイブリッドであると定義しています。数値や法則といった論理的な根拠を導き出した上で、人の心を動かす感性を創造する。このバランスこそが、ビジネスを成功に導くUXの本質と考えています。
人間中心設計の定義と基本的な考え方
人間中心設計の定義は、国際規格ISO9241-210で「インタラクティブシステムの設計と開発を、人間中心に行うためのアプローチ」とされています。この規格では、ユーザーの明確な理解、ユーザーとタスク要求事項の明示、設計へのユーザーの積極的な参加、ユーザー中心の評価などを活動の原則として挙げています。
人間中心設計の考え方の根底にあるのは、作り手の都合や技術的な制約を優先するのではなく、あくまで利用者の視点から出発することの重要性です。これにより、本当に価値のある製品やサービスを生み出すことができます。

出典:ISO 9241-210:2019 https://www.iso.org/standard/77520.html
コンピューターを利用したインタラクティブシステムの人間中心設計に関する規格一覧
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ISO規格(国際標準)名称 | 発行年 | 対応JIS(日本産業規格) |
|---|---|---|
ISO 9241-210:2019 | 2019-07 | JIS Z 8530:2021 |
ISO 9241-210:2010 | 2010-03 | JIS Z 8530:2019 |
UXデザインとの関係性
人間中心設計(HCD)とUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインは密接に関連していますが、その役割は異なります。人間中心設計は、優れたUXを実現するための「考え方や開発プロセス全体のアプローチ」を指します。一方、UXデザインは、そのアプローチを用いて、ユーザーが製品やサービスを通じて得る「体験」そのものを具体的に設計する活動です。
つまり、HCDというプロセスを通じて、質の高いUXという成果物が生まれます。また、UI(ユーザーインターフェース)は、UXを構成する要素の一つであり、視覚的な接点をデザインする部分を担います。
デザイン思考とのアプローチの違い
デザイン思考は、デザインコンサルティング会社IDEOや、その創業者デイビッド・ケリーがスタンフォード大学に設立したd.schoolが世界に広めたことで知られ、デザイナーの思考プロセスをビジネス上の問題解決全般に応用するフレームワークです。これに対し、人間中心設計は、特にインタラクティブなシステム(Webサイト、アプリ、ソフトウェアなど)の使いやすさを向上させることに焦点を当てたアプローチであり、ISO規格でプロセスが定義されています。
デザイン思考がより広範で多様な課題を対象とするのに対し、人間中心設計はユーザーと製品のインタラクションにおける課題解決に特化している点に違いがあります。
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概念 | 焦点 | デパートの定義と役割 |
|---|---|---|
人間中心設計(HCD) | プロセス(工程) | 根拠ある設計を生むための管理枠組み。 |
UXデザイン | 体験(成果物) | ユーザーが受け取る満足度を形にする活動。 |
デザイン思考 | マインドセット(発想) | デザイナーの思考法をビジネスに応用する手法。 |
人間中心設計を支える6つの基本原則
人間中心設計の実践は、国際規格ISO 9241-210で定められた6つの基本原則に基づいています。これらの原則は、開発プロセス全体を通じて常に立ち返るべき指針であり、ユーザーにとって本当に価値のあるデザインを生み出すためのフレームワークとして機能します。各原則を理解し、プロジェクトに適用することが、人間中心設計を成功させる鍵となります。
原則1:ユーザー、タスク、環境の明確な理解に基づいた設計
原則2:設計と開発全体を通してのユーザー参加
原則3:ユーザー中心の評価に基づく設計の実施と洗練
原則4:設計と評価の反復(イテレーション)
原則5:利用者経験(UX)全体への対処
原則6:多様な視点と技能を持つチームによる設計

原則1:ユーザー、タスク、環境の明確な理解に基づいた設計
最初の原則は、ユーザー、そのタスク、そしてユーザーが製品やサービスを利用する物理的・社会的な環境を総合的に理解することです。単にユーザーの属性(年齢、性別など)を把握するだけでなく、彼らがどのような状況で、どのような目的を達成しようとしているのかを深く洞察します。
例えば、同じECサイトでも、家でくつろぎながらPCでじっくり商品を選ぶ状況と、外出先でスマートフォンを使い急いで購入する場合とでは、求められるデザインや機能が大きく異なります。
原則2:設計と開発全体を通してのユーザー参加
ユーザーを単なる調査対象として捉えるのではなく、開発のパートナーとしてプロセス全体に積極的に参加させることが重要です。企画の初期段階で行うインタビューやアンケートだけでなく、設計段階でのアイデア出しや、開発中のプロトタイプの評価など、あらゆるフェーズでユーザーからのフィードバックを得ます。これにより、開発チームの思い込みや仮説が早い段階で修正され、ユーザーの実際のニーズとのズレを防ぐことができます。この原則を実践するには、ユーザーに協力してもらう体制を会社として構築する必要があります。
原則3:ユーザー中心の評価に基づく設計の実施と洗練
デザインの評価は、作り手の視点ではなく、常にユーザーの視点で行われなければなりません。これは「誰が評価するか」という視点の問題です。ユーザビリティテストなどを通じて、実際にユーザーが製品を操作する様子を観察し、「目標を達成できたか」「効率的に操作できたか」「満足できたか」といった観点で評価します。ここで得られた客観的なデータと主観的なフィードバックの両方に基づき、デザイン上の問題点を特定し、改善を重ねていくことが、使いやすさ(ユーザビリティ)の向上に不可欠です。
原則4:設計と評価の反復(イテレーション)
原則3が「ユーザー視点で評価すること」を定めているのに対し、この原則4が定めるのは「その評価サイクルを何度も繰り返すこと」です。人間中心設計は、一度設計して終わりという直線的なプロセスではありません。設計したものをユーザーに評価してもらい、そこで得られたフィードバックを基に再び設計を見直す、という反復的なサイクルが基本となります。初期の段階で完璧を目指すのではなく、小さなサイクルを素早く回すことで、リスクを最小限に抑えながら改善を進めることが可能です。
原則5:利用者経験(UX)全体への対処
デザインの対象は、画面上のUIや特定の機能だけに限定されません。ユーザーが製品を認知し、購入を検討する段階から、実際に使用し、問題が発生した際のサポート、さらには利用後のフォローアップまで、製品利用に関わるすべての体験(UX)をデザインの対象として捉えます。一貫性のあるポジティブな体験を提供することで、ユーザーの満足度やロイヤルティは大きく向上し、長期的な関係性を築くことができます。
原則6:多様な視点と技能を持つチームによる設計
優れたUXデザインは、デザイナー一人の力で実現できるものではありません。デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャー、マーケター、リサーチャーなど、多様な専門性を持つメンバーが協力し、それぞれの知見を持ち寄ることで初めて可能になります。異なる視点が交わることで、より多角的で深いユーザー理解が生まれ、革新的な解決策が創出されます。企業の部門を超えた横断的なチーム編成と、円滑なコミュニケーションが成功の鍵です。
ISO規格に準拠した4つの開発プロセスと具体的な手法
人間中心設計の実践的なプロセスは、国際規格であるISO9241-210(旧ISO13407)で体系化されています。
この規格では、計画段階に続き、4つの主要な活動(STEP1〜4)を反復的に繰り返す開発サイクルが定義されています。
このプロセスに従うことで、体系的かつ効果的にユーザーのニーズを製品開発に反映させることが可能になります。
STEP1:利用状況を調査し、ユーザー理解を深める
STEP2:ユーザーのニーズを分析し、要件を明確にする
STEP3:要件を満たす解決策を具体的に設計する
STEP4:設計案が要件を満たしているか評価・改善する

STEP1:利用状況を調査し、ユーザー理解を深める
最初のステップは、製品やサービスが実際に利用される状況を調査し、ユーザーへの理解を深めることです。
これには、ユーザーへのインタビューやアンケート、行動観察調査といった手法が用いられます。
例えば、Webサイトのリニューアルプロジェクトであれば、既存サイトのアクセス解析データを確認したり、ユーザーが実際にサイトを操作する様子を観察したりすることで、現状の課題やユーザーの隠れたニーズを探ります。
この段階で得られる定性的・定量的な情報が、以降のプロセスの土台となります。
STEP2:ユーザーのニーズを分析し、要件を明確にする
次に、調査で収集したデータを分析し、ユーザーが本当に求めていること(ニーズ)と、それを満たすためにシステムが備えるべき要件を明確にします。
この分析には、ペルソナ(仮想的なユーザー像)の作成や、カスタマージャーニーマップ(ユーザーの行動や感情の変遷を図式化したもの)などの手法が有効です。
これらの手法を通じて、チーム全体でユーザー像を共有し、どのような価値を提供すべきかの方向性を定めます。
このプロセスは、人間中心設計推進において中核をなす部分です。
STEP3:要件を満たす解決策を具体的に設計する
明確になった要件に基づき、具体的な解決策を設計します。
このステップでは、情報構造の設計、ワイヤーフレーム、プロトタイプの作成などが行われます。
ここでは、いきなり完璧なデザインを目指すのではなく、アイデアを素早く形にし、検証できる状態にすることが重要です。
他の成功事例を参考にしつつも、定義したユーザー要件から逸れないように注意しながら、具体的なUIやインタラクションをデザインしていきます。
STEP4:設計案が要件を満たしているか評価・改善する
最後に、作成した設計案がユーザーの要件を満たしているかを評価します。
代表的な手法はユーザビリティテストで、実際のユーザーにプロトタイプを操作してもらい、課題がないか、要件を満たせているかを確認します。
評価によって見つかった問題点は、STEP3の設計プロセスにフィードバックされ、改善が行われます。
この「設計→評価→改善」のサイクルを繰り返すことで、製品の完成度を継続的に高めていくことが、人間中心設計プロセスの本質です。
【デパート実践】どうやって根拠を証明しているのか?
「客観的事実」と「人間学」のハイブリッドを、実際の制作プロセスでどう可視化し、証明しているのか。デパートの具体的な実践方法をいくつかご紹介します。
1. 認知心理学に基づくデザインの言語化
私たちは「なぜここにこの色、このサイズで置いたのか」をすべて説明できます。
ヒックの法則:選択肢が増えるほど意思決定が遅れるため、メニュー構成を絞り込む。
フィッツの法則:操作ミスを防ぐため、ボタンのサイズと距離を最適化する。 このように、「脳がストレスを感じない法則」という科学的プロセスをデザインの裏付けとして提示します。
2. 思考発話法による無意識の可視化
ユーザビリティテストでは、ユーザーに「思ったことをすべて声に出しながら」操作してもらいます。これにより、「人間特有の揺らぎ(迷いや誤解)」を逐一記録し、設計の欠陥を証明する強力なエビデンスとします。
3. プロトタイプによる操作感の検証
デパートでは早い段階でFigma等を用いた「本物そっくりに動く試作」を作成します。静止画ではわからない「スクロールの長さ」や「ボタンを押した瞬間の反応」を、開発前にクライアントと共に体感。「これならいける」という確信を、合意形成の根拠とします。
人間中心設計を導入する3つのメリット
人間中心設計を開発プロセスに導入することは、単に使いやすい製品が作れるというだけでなく、ビジネス全体に多くのメリットをもたらします。ユーザー、開発チーム、そして企業それぞれに良い影響を与え、プロジェクトの成功確率を高め、持続的な成長を支える基盤となります。
ユーザー満足度の高い製品・サービスを開発できる
最大のメリットは、ユーザーの真のニーズや利用状況を深く理解することで、本当に価値のある製品・サービスを開発できる点です。作り手の思い込みではなく、ユーザーからのフィードバックに基づいて設計を行うため、直感的でストレスなく使える、満足度の高いプロダクトが生まれます。
一方で、開発初期の調査・分析に時間やコストがかかる点がデメリットとして挙げられることもありますが、長期的に見れば顧客ロイヤルティの向上や解約率の低下につながり、ビジネス上の大きな利点となります。
開発の手戻りを減らし生産性が向上する
開発プロセスの初期段階でユーザーの要求事項を正確に把握し、プロトタイプによる検証を繰り返すことで、開発後期での大規模な仕様変更や手戻りのリスクを大幅に削減できます。問題が小さいうちに発見・修正できるため、無駄な開発コストや工数の発生を防ぎます。
結果として、プロジェクト全体の生産性が向上し、計画通りのスケジュールと予算でリリースできる可能性が高まります。定期的な更新や改善の際にも、ユーザー視点の基盤があることで意思決定がスムーズになります。
企業のブランドイメージと信頼性を高める
ユーザーにとって使いやすく、満足度の高い製品を提供し続けることは、「ユーザーを大切にする企業」としてのブランドイメージを構築します。ポジティブな口コミや評判は新たな顧客を呼び込み、市場での競争優位性を高めることにつながります。
また、人間中心設計という体系的なアプローチに取り組む企業姿勢は、顧客や取引先からの信頼性を獲得する上でも有効です。組織全体で取り組むことで、企業文化としても定着させることができます。
組織全体に人間中心設計(HCD)を取り入れる重要性
前章で挙げた6つの原則は、一見当たり前のように思えます。しかし、これを実際のプロジェクトで常に遂行し続けることは、想像以上に困難です。なぜなら、制作の現場では、担当者のセンスや納期優先の判断によって、これらの原則が容易に形骸化してしまうからです。
組織として取り組む3つの重要性
品質の標準化(再現性):
一部の専門家だけでなく、営業、ディレクター、デザイナー、エンジニア全員が共通の物差しを持つことで、誰が担当しても一定以上のUX品質を担保できます。
意思決定のスピードアップ:
根拠が主観(好み)ではなく客観的事実になることで、社内調整の摩擦が減り、論理的なスピード解決が可能になります。
致命的な手戻りの回避:
組織全体で検証の文化を持つことで、リリース後の「使いにくい」という経営リスクを上流工程で摘み取ることができます。
この組織としてのUX品質を定着させるために、デパートが1年をかけて取り組んだ具体的な手法を、一つの導入モデルとして次章で紹介します。
組織にUX品質を定着させる学習ロードマップ
デパートでは、前述の「組織としての標準化」を実現するため、全社員が履修する全21回・21時間の独自カリキュラムを開発・実践しました。
これは単なる勉強会ではありません。Web制作の実務工程に人間中心設計(HCD)をどう組み込むかを体系化し、『人の心を動かす体験を創造するWeb制作』を全社の標準とすることを目的としたカリキュラムです。貴社が内製化や改善に取り組む際の参考として、そのエッセンスとしてお役に立てると幸いです。
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フェーズ | 回数 | 主な講義内容 | 習得できるスキル |
|---|---|---|---|
基礎・マインド | Vol.1~4 | 認知心理学、図解(可視化)する力、人間中心設計(HCD)の意義 | センスに頼らない「論理的思考」の土台 |
調査・分析 | Vol.5~10 | ユーザー調査、共感、課題のモデル化、企画構想 | ユーザーの「無意識の不満」を特定する力 |
設計・具現化 | Vol.11~15 | 情報設計(IA)、アクセシビリティ、UIデザイン | 迷わせない構造を「形」にする実装力 |
検証・評価 | Vol.16~21 | プロトタイピング、ユーザビリティテスト、改善サイクル | 事実に基づき「リスク」を摘み取る評価力 |
執筆者である私自身、人間中心設計スペシャリストとしてこの教育の設計・実装を行いました。現場の全員が「人間学」と「科学的視点」の共通意識を持っていることが、デパートの強みの一つでもあります。

専門知識を証明する資格「人間中心設計専門家・スペシャリスト」
人間中心設計の分野では、個人のスキルや実務能力を客観的に証明するための資格認定制度が存在します。特定非営利活動法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)が実施しており、実務家レベルの「人間中心設計スペシャリスト」と、専門家を指導・管理できる上位レベルの「人間中心設計専門家」の2種類が認定されます。
資格の概要と受験要件
2つの資格はレベルで明確に区別されており、自身の経験やキャリアプランに応じて選択できます。 なお、学歴制限はありません。
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人間中心設計スペシャリスト | 人間中心設計専門家 | |
|---|---|---|
位置づけ | HCDの基本的な実務能力をもつ実務担当者 | 実務能力にマネジメント能力を加えた統合的な専門家 |
実務経験の目安 | 2年以上 | 5年以上 |
実践事例 | 3件以上 | 3件以上 |
試験方法 | 書類審査(審査書類の記述内容で評価) | 書類審査(審査書類の記述内容で評価) |
受験料 | 12,000円(税込) | 12,000円(税込) |
※ 実務経験年数はあくまで目安です。大学院在学中の実務活動も実務経験に含まれます。
※ 受験要件の詳細はHCD-Net公式サイトでご確認ください。
資格取得までの流れ
試験は年1回実施されます。2025年度の実績をもとにした、おおよそのスケジュールは以下の通りです。
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時期 | 内容 |
|---|---|
10月頃 | 説明会・オンライン相談会の開催 |
11月上旬〜下旬 | 受験応募・受験料の納付 |
11月〜翌1月 | 審査書類(プロジェクト記述書・コンピタンス記述書)の作成・提出 |
翌1〜3月 | 審査実施 |
翌3月末 | 合格発表 |
試験は書類審査のみで行われます。過去に取り組んできたHCDやユーザビリティに関する活動を審査書類にまとめて提出し、その内容が評価されます。書類の作成には相応の準備期間が必要なため、スケジュールを早めに確認した上で計画的に取り組むことをおすすめします。
※要件は変更される場合があります。最新情報はHCD-Net公式サイトでご確認ください。
HCD-Net:人間中心設計推進機構 / 認定制度 https://www.hcdnet.org/certified
人間中心設計に関するよくある質問
人間中心設計について学ぶ中で、多くの人が抱く疑問や質問について解説します。
Q. 人間中心設計とユーザー中心設計(UCD)は何が違うのですか?
両者はほぼ同義で使われますが、人間中心設計(HCD)はISO規格で定義された国際的な用語です。
人間の能力や限界、心理といった普遍的な側面に加え、製品が使われる特定の「利用状況(コンテキスト)」の理解をより重視する点が特徴とされています。
Q. 自社で人間中心設計(HCD)を取り入れるには、何から始めればいいですか?
まずは1時間のユーザーインタビューを1回行うだけでも、多くの「客観的事実」が得られ、視点が変わります。デパートのカリキュラムは、その「気づき」を全社的な標準品質に高めるための仕組みです。
Q. プロジェクトに人間中心設計を取り入れる際の注意点はありますか?
経営層や関係部署の理解を得て、十分な調査・分析期間と予算を確保することが重要です。
また、ユーザーの意見をそのまま反映するのではなく、行動観察などを通じて言葉にならない「潜在的なニーズ」を洞察する視点が不可欠です。
Q. 期間や費用はどのくらい増えますか?
調査フェーズに数週間の追加が必要になる場合があります。しかし、このプロセスにより開発終盤の致命的な手戻りが激減するため、トータルコストと納期遵守率はむしろ向上します。
Q. 人間中心設計のスキルはどのような職種で活かせますか?
UXデザイナーやWebディレクター、プロダクトマネージャーはもちろん、顧客視点が求められるエンジニア、マーケター、企画担当者など、製品やサービス開発に関わるあらゆる職種で活かせる汎用的なスキルであり、キャリアの幅を広げます。
Q. アクセシビリティ対応も含まれますか?
はい。人間中心設計(HCD)は「多様な状況下にある人間」を対象とするため、アクセシビリティ(障がい者・高齢者対応)は標準工程として当然含まれるべきものです。
確固たる根拠と、その上の、人の心を動かす設計を目指して
人間中心設計(HCD)は、利用者を深く理解し、そのニーズや利用状況を開発の起点とするアプローチです。
そして一部の誰かが作るものではなく、プロジェクトに関わる全員の共通認識によって、UXに磨きがかかっていくのです。貴社のWebプロジェクトを、単なる「公開」で終わらせず、持続的な「成長」へと繋げるためにもぜひ、人間中心設計をとり入れてみませんか。
株式会社デパートは、「論理的な設計プロセス」と「人間への深い洞察」の両立を求める、戦略的なWeb担当者様のパートナーとして、プロジェクトの成功をご支援いたします。
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