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目次
株式会社デパートでも、取り組みに力を入れているウェブアクセシビリティですが、2025年に規格に関する大きな動きがありました。
2025年10月21日、Webコンテンツのアクセシビリティに関する国際的なガイドラインである「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines) 2.2」が、ついにISO(国際標準化機構)の承認を受けました(規格番号:ISO/IEC 40500:2025)。
参考: W3CのWebコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン2.2がISO/IEC国際標準として承認
これは、日本のWebサイトのアクセシビリティガイドラインによく用いられるJIS規格も近いうちにアップデートされることを意味しています。
この記事では、このニュースが今後、日本のWebサイトにどのような影響を与えるのか、そして今のうちに理解しておくべき「現行規格(JIS)と新基準(WCAG 2.2)の具体的な違いと対策」について解説します。
なぜ「ISO」承認で「JIS」も変わるのか? 3つの規格の関係
「WCAG」「ISO」「JIS」と、ここまで登場してきた規格は何がどう違うのか、アルファベットが並んでいて少しわかりにくいように感じてしまうかもしれませんが、今回のニュースを理解するには、まず「世界基準(WCAG)」「国際規格(ISO)」「国内規格(JIS)」の3つが、実はすべて繋がっているという点を知っておく必要があります。
デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」では、この関係性について非常に分かりやすく解説されています。
3つの規格の中身はほぼ同じ
現在、日本の多くのWebサイトが準拠の目標としている国内規格「JIS X 8341-3:2016」ですが、 このJIS規格は、日本独自にゼロから作られたものではありません。
デジタル庁のガイドブックによると、規格の関係性は以下のようになっています。
WCAG 2.0(世界標準のガイドライン)
W3CというWebの標準化団体が策定ISO/IEC 40500:2012(国際規格)
WCAG 2.0がそのまま国際規格として承認されるJIS X 8341-3:2016(日本産業規格)
ISO規格を日本語訳し、技術的に同一の内容(一致規格)として制定

出典:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」
つまり、「WCAGの内容がISOになり、ISOの内容がJISになる」という仕組みで、国際基準が国内規格へと反映されていきます。
なお、現在のJIS規格は、2008年に作られた「WCAG 2.0」と全く同じルールで運用されています。
世界標準は「WCAG 2.2」へ
記事の冒頭でも記載した通り、2025年はこの流れに新しい動きがありました。
2025年10月21日に、最新のガイドラインである「WCAG 2.2」が、新しいISO規格として正式に承認されたのです。
これまでの「一致規格」の流れを踏まえれば、日本のJIS規格もこの新しいISO(WCAG 2.2相当)に合わせて改正されることは、ほぼ確実と言えます。
日本国内におけるJIS規格の策定や翻訳を行うウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)も、すでにこの改正に向けた検討を進めていますので、遠くない未来、現在のJIS規格は改定され、新しい基準へと生まれ変わることになるでしょう。
JIS規格とWCAG 2.2の違いと具体的な対応策

では、現在のJIS規格(WCAG 2.0)と、将来のJIS規格となる新しいWCAG 2.2では、何が違うのでしょうか?
現在のJIS規格(WCAG 2.0)から、最新のWCAG 2.2へ移行する場合、間にある「WCAG 2.1」も含めた2段階分のアップデートを一気に取り入れることになります。
WCAG 2.1の主な追加項目
スマートフォンやタブレット等のモバイル対応、ロービジョン(弱視)への配慮が中心
WCAG 2.2の主な追加項目
操作のしやすさ(ターゲットサイズ、ドラッグ代替)と認知負荷の軽減(認証、再入力防止)など
変更点は多岐にわたりますが、今回は適合レベルAAを目指す一般的な企業サイトにおいて、追加対応が必要となるレベルAとAAの項目について解説します。
【WCAG 2.1 の追加項目】モバイル対応・ロービジョンへの配慮
2018年に登場したこのバージョンでは、スマートフォンの普及に伴い「タッチ操作」や「モバイル画面」での利用に関する基準が多く追加されました。
また、画面を拡大して利用するロービジョン(弱視)ユーザーへの配慮も強化されています。
適合レベル Aでは5つの項目、レベルAAでは7つの項目が追加されました。
達成基準 1.3.4 表示の向き (AA)
スマートフォンやタブレットを縦・横どちらに向けても使えるようにする
端末を車椅子に固定しているユーザーなどのために、特定の向き(縦のみ等)を強制してはいけません。
簡易チェックポイント
画面を回転させてもレイアウトが崩れず、正しく表示されますか?
達成基準 1.3.5 入力目的の特定 (AA)
自動入力を支援する
名前や住所などの入力欄に、ブラウザが意味を理解できる属性(autocomplete属性)を付与し、自動入力を可能にします。
簡易チェックポイント
フォームでブラウザの自動補完(オートコンプリート)機能が正しく働きますか?
達成基準 1.4.10 リフロー (AA)
横スクロールを発生させない
画面幅320px(スマホ相当)まで狭めたとき、または400%まで拡大したときに、横スクロールせずに縦スクロールだけで読めるようにします。
簡易チェックポイント
ブラウザの幅を狭くしても、画像や表がはみ出さず、文章が自動で折り返されますか?
達成基準 1.4.11 非テキストのコントラスト (AA)
アイコンや枠線も見やすくする
文字だけでなく、「意味のあるアイコン」「入力フォームの枠線」「グラフ」「ボタン」なども、背景色とのコントラスト比(3:1以上)が必要です。
簡易チェックポイント
メニューのアイコンやボタンの境界線が、薄すぎて見えにくくなっていませんか?
達成基準 1.4.12 テキストの間隔 (AA)
文字間隔を広げても崩れない
ユーザーが閲覧設定で「行間」「文字間隔」「段落間隔」を広げた際に、文字が重なったり欠けたりしないようにします。
簡易チェックポイント
CSS等で強制的に高さを固定(height固定)して、文字が溢れる作りになっていませんか?
達成基準 1.4.13 ホバー又はフォーカスで表示されるコンテンツ (AA)
ポップアップの制御
マウスホバーで表示されるツールチップやメニューが、マウスを動かした瞬間に消えてしまわないようにします。
簡易チェックポイント
ホバーで出たポップアップの上にマウスカーソルを移動できますか? ESCキーで閉じることができますか?
達成基準 2.1.4 文字キーのショートカット (A)
ショートカットの誤作動を防ぐ
「K」や「J」など、キーボードの文字キーを単独で押すだけで実行されるショートカットがある場合、それをオフにできるか、変更できるようにします(音声入力などの誤動作防止)。
簡易チェックポイント
文字キーひとつで動く独自のショートカット機能はありますか? ある場合、ユーザーがそれを無効化または変更できますか?
達成基準 2.5.1 ポインタのジェスチャ (A)
複雑な指の動きを強制しない
2本指でのピンチ操作や、複雑な軌跡を描くスワイプ操作などを必須にしてはいけません。
簡易チェックポイント
地図の拡大縮小やカルーセルの移動が、「+/-ボタン」や「矢印ボタン」など、シングルタップ(クリック)だけでも操作できますか?
達成基準 2.5.2 ポインタのキャンセル (A)
「指を離したとき」に実行する
ボタンを押した瞬間(ダウンイベント)ではなく、指を離した瞬間(アップイベント)に機能が実行されるようにします。これにより、間違って触れた場合に指をずらすことでキャンセルが可能になります。
簡易チェックポイント
ボタンを押したまま指を外にずらして離したとき、機能が実行されずにキャンセルできますか?
達成基準 2.5.3 ラベルを含む名前 (A)
見た目の名前と読み上げ名を一致させる
画面に見えている「検索」という文字と、内部的に設定された名前(aria-label等)が異なると、音声入力ユーザーがボタンを指定できません。
簡易チェックポイント
アイコンボタンなどで、見た目と異なる内部名称を設定していませんか?(基本は一致または包含させる必要があります)
達成基準 2.5.4 動きによる起動 (A)
「振る」動作を必須にしない
「スマホを振って取り消し(シェイク)」などの機能がある場合、ボタン操作など別の方法でも実行できるようにします。
簡易チェックポイント
端末のセンサーを利用した操作は、設定でオフにできる、または画面上の操作で代替できますか?
達成基準 4.1.3 ステータスメッセージ (AA)
変化を読み上げる
「送信しました」「エラーがあります」などのメッセージが表示された際、フォーカスを移動しなくてもスクリーンリーダーがその内容を読み上げるようにします。
簡易チェックポイント
画面の一部が更新されたとき、視覚障害のあるユーザーにもその情報が伝わりますか?
【WCAG 2.2の追加項目】操作性・認知面の強化
続いて、今回のISO承認で注目されているWCAG 2.2の最新バージョンです。
細かいマウス操作が苦手な方への配慮や、認知機能に特性のある方が迷わず操作できるための基準が中心となっています。
適合レベル Aでは2つの項目、レベルAAでは4つの項目が追加されました。
達成基準 2.4.11 隠されないフォーカス (最低限) (AA)
フォーカス位置を隠さない
Tabキー等で移動中、フォーカスしている要素が「固定ヘッダー」や「チャットボット」の下に完全に隠れて見えなくなることを防ぎます。
簡易チェックポイント
画面をスクロールしながらTabキー操作をした際、今どこを選択しているか常に画面上で確認できますか?
達成基準 2.5.7 ドラッグ動作 (AA)
ドラッグ操作を強制しない
スライダー操作やドラッグ&ドロップなど、「押したまま移動する」操作に対し、タップやクリックだけの代替手段を用意します。
簡易チェックポイント
地図の移動や並べ替え機能などは、矢印ボタンや上下ボタンでも操作できますか?
達成基準 2.5.8 ターゲットのサイズ (最低限) (AA)
押しやすい大きさを確保する
ボタンやリンクのクリック可能領域(ターゲットサイズ)は、最低でも 24×24 CSSピクセル 必要です。
簡易チェックポイント
スマホでタップする際、指がはみ出して隣のボタンを誤操作しそうな箇所はありませんか? 小さい場合は周囲に余白を持たせてください。
達成基準 3.2.6 一貫したヘルプ (A)
ヘルプの位置を統一する
「お問い合わせ」「FAQ」「チャット」などのヘルプ機能へのリンクが複数のページにある場合、常に同じ場所(例:右下、ヘッダーの右端など)に配置します。
簡易チェックポイント
ページごとに「お問い合わせボタン」の場所が変わっていませんか?
達成基準 3.3.7 冗長な入力項目 (A)
同じことを何度も入力させない
一度入力した情報を、同じプロセス内でもう一度入力させる場合、情報の再利用(コピペ不要な自動入力や選択式)を可能にします。
簡易チェックポイント
配送先住所を入力した後、請求先住所でも同じ入力を強いていませんか?(「配送先と同じ」チェックボックスなどで対応します)
達成基準 3.3.8 アクセシブルな認証 (最低限) (AA)
記憶に頼らない認証
ログイン時に「パスワードの手動入力」や「画像のパズル」などの認知テストを強制しません。(認知機能の低下や記憶力に不安のあるユーザーにとって大きな障壁となります。)
簡易チェックポイント パスワード入力欄への「貼り付け(ペースト)」を禁止していませんか?(パスワード管理ツールを使えるようにする)。可能であれば生体認証やマジックリンク(メール認証)などを検討してください。
WCAG 2.2で削除された項目

WCAG 2.0から存在していた以下の達成基準が、WCAG 2.2では削除されました。
達成基準 4.1.1 構文解析 (廃止・削除)
これは、HTMLバリデーターで構文エラー(「IDの重複がないか」「タグの閉じ忘れがないか」など)をチェックする項目でしたが、現在のブラウザや支援技術(スクリーンリーダー等)では、多少の構文エラーがあっても修復して正しく動作してくれるようになったので、アクセシビリティ上の実害がほとんどなくなり、項目削除となりました。
ただし、保守性や予期せぬバグを防ぐために、引き続き正しいHTMLを書くことが重要であることに変わりはありません。
JIS規格の更新に向けて今からできる準備を
JIS規格(WCAG 2.0)から最新のWCAG 2.2へのアップデートは、項目の数だけ見るとハードルが高く感じられるかもしれません。
しかし、その変更点の多くは「スマホ対応」や「入力負荷の軽減」など、現代のWeb利用実態に即したものであり、対応することはそのままユーザビリティの向上に直結します。
今のうちからWCAG 2.2の対応に向けた準備を進めておくことで、 将来的なJIS規格改正にも慌てることなくスムーズに適応でき、何より現在のユーザーにとっても「使いやすい」快適なサイト環境をいち早く提供できます。
WCAG 2.2の対応サポートなら株式会社デパート
株式会社デパートでは、最新のWCAG 2.2の知見を取り入れたWebサイト制作・リニューアルを行っています。
「うちのサイト、新しい基準だとどこがNGなの?」といった簡易診断やご相談も承っております。
私たちのミッション「Good Design, Good Experience」の根底にあるのは、常にユーザーという「人」を中心に考える姿勢です。
規格ありきではなく、その先にあるユーザーの体験を第一に考えたWebサイト作りを、ぜひご一緒させてください。
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