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アクセシビリティとサステナビリティはどう関係してる? ウェブアクセシビリティとサステナビリティサイトの関係について考察してみた
ウェブアクセシビリティとSDGsの関係
「SDGs」は言わずもがなSustainable Development Goalsの略称で、日本語に直訳すると「持続可能な開発目標」という意味になります。2015年の国連総会で採択された国際的な目標であり、2030年までの達成をめざして17の目標と169のターゲットが示されています。
SDGs CLUB |日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
SDGsの目標でウェブアクセシビリティに関係してくる項目として、目標10の「人や国の不平等をなくそう」が挙げられると思います。目標10のターゲットである10-2には「2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。」とあります。このことから、視覚・聴覚に障害があったり、認知・学習に障害がある方がWebサイトに等しくアクセスできるようウェブアクセシビリティ対応を行うことも、目標10に当てはまる活動と考えてよいでしょう。
その他、Webサイトがどんなユーザーに向けてどんな情報・サービスを提供しているかによっては、目標4「質の高い教育をみんなに」のターゲット4-5や、目標8「働きがいも経済成長も」のターゲット8-5など、目標10以外も関連してくるかもしれません。
また、SDGsを推進する国連は自らが運営するWebサイトについてアクセシビリティガイドラインを策定しています。
Accessibility Guidelines for UN Websites
同Webサイトでは、「社会への完全かつ効果的な参加及び包容」は「障害者の権利に関する条約」の基本原則であると説明されており、国連が障害者による情報へのアクセシビリティを確保することを人権保障として捉えていることがうかがえます。
ESGとウェブアクセシビリティの関係
次に、企業におけるESG活動とウェブアクセシビリティの関係を見ていきます。
企業におけるサステナビリティの取り組みは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つに分類されることが多く、これら3つの英語の頭文字をとって「ESG」と呼ばれます。
ESGはもともとは投資活動から始まった概念です。ESGに取り組む企業への投資は「ESG投資」と言われ、今後も存在感を示すことが予想されます。
ESG投資のための代表的な評価指数としてはDJSI(Dow Jones Sustainability Indices)やFTSE4Good Index Series、MSCI ESG Indexesなどがありますが、こうした格付機関は企業に対してESG活動に関するアンケートを実施したり、企業が情報開示を行っているサステナビリティサイトや統合報告書などを通じて情報収集を行い、ESG投資を行うにふさわしい企業かどうかを評価しています。
近年はプライム市場の企業に対してはTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示が義務付けられたり、サステナビリティ情報を含む重要な会社情報の英文開示の義務化が予定されるなど、上場企業にとっては必須で対応しなければならない取り組み(ESG活動)が年々増え続けています。しかし、ウェブアクセシビリティ対応については現状、ESGの観点では企業側にこうした義務が課されているわけではありません。ですので、企業のESG活動(とその活動に対する評価)とウェブアクセシビリティ対応は直接的に結びついているわけではないと言えるでしょう。
ただし、ESG情報開示のための代表的な枠組みであるGRIスタンダードには、企業がサステナビリティサイトや統合報告書などの各種媒体を通じて報告を行う際の原則として「明瞭性」が挙げられており、その手引きには「情報利用者のアクセシビリティに対する個別のニーズ(能力、言語、技術に関連するもの)を考慮する」という記載があります。
つまり、企業がESG情報開示を行う際の前提としてウェブアクセシビリティ対応を「考慮」する必要があるということになります。
GRI - GRI Standards Japanese Translations
また、ウェブアクセシビリティに取り組むということは、副次的に(人だけでなく機械からもアクセシブルなWebになるため)検索エンジンフレンドリーなWebサイトの構築にも繋がります。このことはサステナビリティサイトがより多くの検索エンジンや格付機関のクローラーから情報収集されやすくなることを意味します。
まとめると、ウェブアクセシビリティ対応がESGに関する評価を直接的に上げるわけではないけれども、自社のESG活動をより適切に評価してもらうために、企業はウェブアクセシビリティに取り組むべきと言えるでしょう。
サステナビリティサイトとウェブアクセシビリティの関係
最後に、企業のサステナビリティサイトのアクセシビリティ対応状況や、サステナビリティサイトや統合報告書のなかに「アクセシビリティ」というワードが登場しているかどうかを見ていきたいと思います。
今回は、東洋経済新聞社が発表している「CSRランキング 2024」から上位51社(50位が2社存在するため)のサステナビリティサイトやその周辺にある情報について調査をしてみました。
東洋経済「CSR企業ランキング 2024年版(第18回)」の結果
東洋経済「CSRランキング 2024」上位51社のウェブアクセシビリティ調べ
ウェブアクセシビリティ方針(またはそれに類するページ)を公開している企業 |
25社 |
ウェブアクセシビリティ対応の準拠レベルをAAとしている企業 |
16社 |
ウェブアクセシビリティ方針はあるが具体的な目標を記載していない企業 |
7社 |
現行のサステナビリティサイトやサステナビリティレポート・統合報告書でウェブアクセシビリティ(情報アクセシビリティ)について言及している企業 |
8社 |
※調査期間は2024年6月11日〜18日。
まず、ウェブアクセシビリティ方針をWebページとして公開している企業は51社のうちおよそ半数の25社でした。そしてCSRランキング上位20社に限れば、Web上にアクセシビリティ方針を掲げている企業は全体の7割(14社)にのぼりました。
アクセシビリティ方針を開示している企業では準拠レベルをAAとしている企業が多かったものの、具体的な目標や準拠レベルを記載していない企業も数多く見受けられました。
また、現行のサステナビリティサイトやサステナビリティレポート・統合報告書において、ウェブアクセシビリティについての言及(広く情報アクセシビリティを意味する言及を含みます)がある企業は8社でした。
ESGの枠組みとしてはS(社会)の項目で人権やダイバーシティ&インクルージョン、人的資本、顧客への取り組みとしてわずかに記載されているケースがほとんどでしたが、KDDIは「社会」に関する報告のなかでアクセシビリティを項目立てして取り上げています。
また、キヤノンについてはサステナビリティサイトの「報告方針」としてアクセシビリティについて言及しており、先にご紹介したGRIスタンダードの報告原則に則って、アクセシビリティを考慮した情報開示の工夫を行っています。
まとめ
現代においてインターネットなしの生活というのは考えられず、Webサイトが重要な社会インフラの役割を果たしていることに疑いの余地はないでしょう。
私たちは何かを調べる時も、物を買う時も、どこかへ移動をする時も、Webサイトを活用することが当たり前になっています。したがって、ウェブアクセシビリティ対応も「義務だから必要」「ESG評価が上がるから必要」ということではなく、企業にとって当たり前の取り組みになってくるはずです。
特に高齢化が進む日本社会では、全人口のうち視覚・聴覚・認知・学習等の機能が低下した方の割合が増える可能性が高く、ウェブアクセシビリティは世界各国のなかでもとりわけ重要な取り組みテーマになってきそうです。
以上、本記事ではウェブアクセシビリティとサステナビリティがどのように関係しているかについて考察してみました。
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