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Web制作はオワコンなのか?
Web制作の定義しておく
Web制作と一口に言ってもWebサイトの企画・要件定義・設計からデザインやコーディングといった制作、リリース後の運用やメンテナンスまで非常に幅広い業務があります。制作するWebサイトの種類もコーポレートサイト・ECサイト・サービスサイトなどさまざまです。
そこでWeb制作はオワコンという当記事のテーマに併せて、実際のWeb制作工程である以下の業務のみを、狭義の定義としていったん定義しましょう。Web制作の上流工程に含まれる要件定義・設計や関連業務であるWebマーケティング・Webエンジニアリング等を含めると、論点が大きく違ってくるためです。
- 制作進行ディレクション
- デザイン
- コーディング
当記事では、上記で定義したWeb制作業務にフォーカスして、オワコンであるのかどうかを考えていくこととします。
Web制作がオワコンと言われている主な理由
Web制作がオワコンと言われている理由は1つではなく複数あります。多く目にする主な理由について以下にご紹介していきます。
ツールの進化
近年では社会全体でDX(デジタルトランスフォーメーション・デジタル化)が進んでおり、ITツールによる業務効率化・業務負荷軽減が実現されつつあります。Web制作業界においても例外ではなく、「Canva」等のブラウザ上で手軽にデザインを行えるツールや、「NoCode(ノーコード)」と呼ばれるコーディング不要でWeb制作を行えるツールなど、便利なツールが登場してきています。
このようなツールの進化がなぜ「Web制作はオワコン説」に繋がるかというと、Web制作に携わる人材の専門性が必要なくなり、ツールに代替されてしまうためです。極端な例で言うと、仮にWeb制作が全てNoCodeで行われるようになると、コーディング自体が不要となり、コーディングのみを担当していたWebコーダーは、職種自体が無くなってしまうでしょう。
デザインに関しても、従来はデザイン理論を学びグラフィックソフトに習熟する必要がありましたが、ツールによりクオリティの高いデザインを簡単に作成できるようになると、デザインスキルの価値も低減してしまいます。既にある程度のクオリティのデザインであれば、テンプレートに当てはめるだけで簡単に作成できる時代になっています。
結果として起こる現象として、Web制作への参入障壁低下による参入者の増大ならびに過当競争による価格破壊が挙げられます。
ツールの進化によるデメリットを実感した方が、Web制作がオワコンと発言しているケースは少なくはないでしょう。
フリーランス・副業の参画といった労働者の変化
副業で取り組む方やフリーランスの方が増えるなど、働き方が多様化してきたこともWeb制作がオワコンと言われるようになった理由のひとつです。
Web制作は特別な設備や大きな初期投資が必要無いため参入障壁が低く、経験者だけでなくスクールや独学で学んだ方も次々と参入してきています。
もちろん制作キャパやクオリティはWeb制作会社には及びませんが、簡易的な案件であれば高額なWeb制作会社に依頼するよりも安価なフリーランスに依頼するクライアントも増えており、Web制作業界全体の相場の引き下げや価格崩壊を招いています。
このような労働者の変化に起因する価格崩壊や受注数減少に直面している方は、Web制作はオワコンと感じるケースが多いように感じます。
従来からの労働環境の悪さ
Web制作・システム開発といったIT業界は、大手広告代理店やSIerといった企業が受注や上流工程を行い、中小企業が下流工程を請け負うという多重下請構造の商流が形成されています。下位の商流となるほどマージンが発生して利益率が低くなるため、薄給・労働負荷増・長時間労働といった労働環境の悪化を招きやすくなります。
また、直販でWeb制作を請け負う場合においても、Web制作会社の数は非常に多く価格競争に巻き込まれやすいため、同じく薄給・労働負担増・長時間労働を招きやすい状況にあります。
このような事情から、劣悪な労働環境下に置かれている方が、Web制作についてオワコンであると発言するケースも少なくありません。この場合はWeb制作というビジネスについてオワコン発言をしているのではなく、置かれている労働環境について発言しているのが妥当な解釈でしょう。環境が変われば違った意見となる可能性は大いにあります。
以上のオワコンである理由に対する見解は?
上記3点のWeb制作がオワコンという指摘に対する見解を、Web制作会社の視点から解説します。
・ツールの進化
まずツールの進化による業務の代替については、特定の業務についてはその通りです。クライアントへのサービス提供を目的とする会社側としては、人力で業務を行うよりもツールで正確に素早く済ませるのであれば、積極的にツールに代替させるからです。
スタッフのリソースを開放してより重要な業務を担当させたいという意図もあります。
・労働者の変化による価格崩壊
続いて働き方の多様化・労働者の変化による価格崩壊等の影響については、弊社では一部のプロジェクトについては当てはまっており、全体的には価格が低下していると感じています。
企業規模でないと受けられない案件に関してはその限りではありません。
・労働環境の悪さ
労働環境の悪さに起因するWeb制作オワコン説については、Web制作業界全体での労働環境は改善傾向にあるため、当てはまらないと感じています。
ただし労働環境については会社によって事情が大きく異なるため、厳しい環境下に置かれている方がいるという事実は否定できません。
このように、Web制作オワコン説は、特定の部分を見ればある程度正しいと思われるが、全くWeb制作業界全体を表しているわけではありません。Web制作業界に飛び込みたい方や、これから学びたい方は、この事実を知っておくことがまず重要です。
より正確な業界事情をお伝えするために、Web制作の現場の実情ならびに現場の経営者目線での具体的な対策について、続けてご紹介していきます。
実際のWeb制作の現場事情
実際のWeb制作現場が現在どのような状況となっているかというと、「低スキル人材は溢れつつあるが、めちゃめちゃできる人が足りない」というのが実直な感想です。
上記のメモは、Web制作に携わる人材の分布を図示したものです。上に行くほど高度なスキルを有した人材となります。最上層に位置するハイレイヤー人材には、周辺領域を含めた高度な知識・経験を有している人材や、管理・マネジメントスキルを有した人材・ハイレベルなWeb制作(デザイン)に特化した人材が該当します。
そのほかの人材分布としてWeb制作にはハイレイヤー人材だけではなく、必要最低限の業務や管理ができるミドルレイヤー、経験値や技術力が低かったり、作業部分を担当するローレイヤー以下の人材も必要となります。
弊社の感覚としては、高・中の人材は絶対必要人数に対して実際の人数は足りており、ローレイヤーの人材ならびにそれ以下の人材については溢れてきているという印象です。
ではツールの進化等により今後どのような変化が起こるのか、Web制作の現場を指揮する経営者目線で予測してみます。
具体的にどうなっていくか、図にしつつ、以下で説明させてもらいます。
1.デジタル文脈でのWeb制作の増加
Web制作会社としては、同等のクオリティが担保できるのであれば、効率性・リソースの観点からツールを優先的に活用するため、デジタルツールを積極的に活用したWeb制作が増加すると考えられます。根拠はありませんが、結果としてWeb制作案件全体のボリュームについては多少増えるのではと感じています。
しかし、コンセプトメイキング・設計・構成といった抽象度の高い部分はツールに代替できないため、このようなスキルを持つミドルレイヤー・ハイレイヤーの人材は足りなくなるのではと予測しています。
2.ツールの代替で業務が減る
ツールに業務が代替されることにより、「コーディングのみ」「簡易的なデザインのみ」「チェック・テスト」等を担当する人材の業務は減るでしょう。上図で言うところのローレイヤーに分布している人材です。ディレクション業務についてはさほど影響は無いでしょう。
3.ツールにより業務が簡易化されて、参入者増加
ツールによりローレイヤーの人材は仕事を奪われますが、逆に業務が簡易化されることにより参入のチャンスにもなります。Web制作現場から溢れているローレイヤー以下のメンバーの参入が増加するのではと考えています。
結論
全体的な傾向を見ての結論として、ツールの代替によりWeb制作が効率化・加速することにより、高度なスキルを持つ人材の必要人数は増えるのではないかと予想しています。Web制作においては、高度なスキルと一口に言っても以下に挙げるように多岐にわたります。
・上流工程を担当する人材
設計・構成・コンセプト等抽象度の高い部分を担当
・クライアントとの折衝・調整や管理・マネジメントを行う人材
Webディレクター・プロジェクトマネジャー(PM)
・特定分野のスペシャリスト
・ハイクオリティなデザイン
・大規模案件やフルスクラッチなど高レベルなコーディング
・エンジニアリングを含めたデザインやシステムとの連携
等を担当
このようなスキルはそう簡単にツールに代替できるものではありません。また、高度なスキルを持つ人材も必ずどこか偏りがあるものであり、全体をこなせる人材は希少です。
これからのWeb制作会社は高度人材をバランスよく確保する必要があり、プレイヤー側としては自身を高度人材へと昇華させることで、市場価値を高めていく必要があるでしょう。
Web業界に限らずハイレイヤーの人材は希少であり、業界全体の大多数の人々は中層以下に属しており、そちらの状況に目が行きがちです。そのため、「Web制作はオワコン」と感じやすい傾向もあるのではないでしょうか。
よく聞く罠と対策
「Web制作オワコンだから周辺領域頑張りましょう。」というのは、よく聞くフレーズです。周辺領域というのは、同じWeb業界に置いてWeb制作と関連性の高い、WebマーケティングやWebシステム開発等のことです。確かに周辺領域も含めてビジネスを展開すれば、受注単価低下や受注数減少の対策になりえます。しかし、この戦略は個人的には非常に難しいと思っています。
なぜなら、周辺領域についても技術の進化・ツールへの代替などWeb制作業界と同じような現象が起こっているためです。システム開発などはむしろWeb制作よりも技術の進化や変化が激しい傾向にありますし、Webマーケティングに関してもAIによる広告配信や運用技術の高度化などが急速に進んでいます。
周辺領域においても十分なパフォーマンスを発揮するには高度なスキルが求められるのが現実であるため、Web制作で躓いたからという理由で移行するのは得策ではないでしょう。マルチにビジネスを展開するはずが、どれも中途半端となってしまっては本末転倒です。
プログラミングスクール等のポジショントークでは、このような事情は語られていないため、安易に周辺領域を検討するのは控えた方が良いでしょう。
現実的な対策
ではWeb制作においてオワコン(オワコン人材)とならないためにはどうすればいいのでしょうか。それにはやはり先に記載した通り、「スキルを高度化することで高度人材を目指すこと」。これに限る。
ハイクオリティなデザイン・高度なデザイン・成果に繋がるデザインにフォーカスしているデパート社(弊社)としては、Web制作はオワコンどころかむしろ進化・加速しつつあると感じています。Web制作業務が高度化されてクオリティが高まることや、ツールの進化により業務効率化・スピードアップが図れることにより、クライアントにより高い価値を効率的に提供できるようになるためです。
高度なデザインやマークアップなど、スペシャリストでないと担当できない業務・抽象度の高い判断が必要な業務・感性やヒューマンスキルが求められる業務などは、テクノロジーが進化したとしてもまだまだツール・AIに代替されるものではありません。単純に作っていくというWeb制作はオワコンになっていくのではないかと考えられますが、上流はオワコンではなく増えて行くのではないかと弊社では予想しています。
従って、現在Web制作に携わっている方は、漠然と作業を行うのではなくスキルを磨いたりノウハウを蓄積したりしながら業務を行うのが現実的な対策と言えます。また、先述の周辺領域に関しても、WebマーケティングやWebシステム開発といった異分野ではなく、UX/UIやトレンドのデザインの把握といった、Web制作自体の周辺領域にフォーカスして強化・高度化していくと、より高い付加価値を提供できるようになるのではないでしょうか。
まとめ
Web制作がオワコンであるかという意見について、Web制作会社の見解をご紹介してきました。記事内でもご紹介した通り、オワコンという意見も一部事実である感は否めませんが、業界全体がオワコンというわけではありません。考え方や立ち回りによってはむしろアドバンテージを発揮できる可能性もあります。
現にハイクオリティなWebサイト制作やクライアントの成果に繋がるWebサイト制作に特化している弊社は、Web制作がオワコンであるとは感じていません。
大切なことは、一部の偏った意見に振り回されず、正しい情報を把握して判断を行う点。これからWeb制作を学ぼうと考えている方は、時流に合ったスキルを身に付けて、活躍できる人材を目指しましょう。
弊社ではそんな、あなたを求めています↓
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