サーバー保守・運用はなぜ必要?重要性とポイントを解説

2025.06.132025.08.29
目次

最新のITシステムを活用するために、サーバーの安定した稼働は必須です。しかし、サーバーには高い専門性が求められ、適切な運用がなされないと深刻なリスクにさらされかねません。

本記事では、サーバー保守・運用の重要性と基本的な対策について解説します。企業のセキュリティ対策やコストに関する課題と効果的な解決方法、そしてサーバー保守・運用に携わるエンジニアの役割など、実践的な知識を分かりやすく紹介します。

サーバー保守とは

サーバーを安定して稼働させ、システムを良い状態に保つための継続的な取り組みが「保守」です。保守を後回しにすると、ダウンタイム(停止時間)が増えたり、障害が長引いたり、セキュリティ上のリスクが高まったりします。

ここではまず、日々の「運用」との違いを確認し、保守の重要性と対象範囲を整理します。

サーバー運用との違い

サーバーの「保守」は、日々の「運用」と混同されがちです。まずは下の表で役割の違いを確認しましょう。実際の現場では、どちらも連携してはじめて効果が出ます。

サーバー運用

サーバー保守

目的

毎日の安定稼働を守る

障害を防ぎ、すばやく復旧できる体制を作る

主な作業

  • 監視(リソース/ログ)

  • 設定変更やアカウント管理

  • 一次対応(再起動など)

  • ハードの修理・交換

  • OS/ミドルウェア/アプリの更新

  • バックアップの設計〜検証

  • 脆弱性対応やアクセス制御

時間軸

日次〜週次のオペレーション

月次〜年次の計画と改善(見直しも含む)

成果物

運用手順、監視ルール、アラート記録

保守計画、変更管理台帳、SLA/SLO、手順書(Runbook)

つまり、運用は日々の管理を指し、保守は長期的な視点から、障害の防止や復旧、セキュリティ対策などを行うことが主な目的です。実際の業務では両者が密接に関係し、組み合わさることが多くあります。

サーバー保守の重要性

企業にとってサーバーは事業の土台です。保守を怠ると、次のようなリスクが起こる可能性があります。

  • 閲覧・業務停止:売上や生産性の損失につながり、契約上のSLAに触れる場合もあります。

  • データの喪失/改ざん:復旧コストや法的リスクが増え、信用の低下に直結します。

  • 攻撃のされやすさが増す:パッチ未適用や設定不備が侵入口となり、被害が広がりやすくなります。

特に中小企業では、人手や時間が不足しがちです。外部の専門家を取り入れつつ、自社の業務に合わせた保守計画を作るのが現実的です。丸投げではなく、対象範囲・優先度・責任の分け方をはっきりさせ、品質を担保します。

保守対象となるサーバー種類

企業内で一般的なサーバーと、保守で見るべき観点を簡潔にまとめます。種類ごとに障害の影響度が違うため、どこから手を打つかの優先順位が大切です。

  • Webサーバー

    公開が止まると直ちに機会損失につながります。WAF(攻撃対策)の設定、証明書の更新、アクセスログの保全と確認が重要です。

  • ファイルサーバー

    社内の作業が止まり、情報漏えいのリスクもあります。アクセス権(だれが見られるか/触れるか)の設計と、世代管理つきバックアップが要点です。

  • データベースサーバー

    性能劣化や障害の波及が大きくなりがちです。インデックスや統計情報の更新、メンテナンス(VACUUMなど)、災害対策設計(DR)が鍵になります。

  • メールサーバー

    送受信が止まると外部との連絡に支障が出ます。DNS設定(SPF/DKIM/DMARC)の整備と、メールキューの監視が欠かせません。

サーバー保守の具体的な業務内容

サーバー保守には、障害対応、定期メンテナンス、システムのアップデート、バックアップの管理など、いくつもの仕事が含まれます。単発で終わらせず、計画→実施→検証→改善の流れで回すことが重要です。

障害対応

障害が起きたときは、最初の対応の速さと正確さが結果を大きく左右します。慌てずに流れを決めておくことが大切です。

  • 検知:監視アラートやユーザーからの報告を起点に状況を把握します。CPUやメモリの使用状況、ディスクや通信の遅延、ログの内容などを組み合わせて確認します。

  • 切り分け:問題がネットワークなのか、ハードなのか、OSやアプリケーションなのかを素早く見極めます。手順書(Runbook)があれば対応が格段に速くなります。

  • 一時復旧と恒久対策:まずはフェイルオーバーやサービス再起動などで影響を抑え、その後で設定の修正や監視ルールの追加など、再発防止まで取り組みます。

事前に役割分担・連絡方法・判断基準を文書化しておくと、実際の障害時にも混乱が減ります。対応後には必ず振り返り(ポストモーテム)を行い、学びを次に活かしましょう。

定期メンテナンス

定期メンテナンスは、トラブルの芽を早めに見つけて取り除く予防の取り組みです。これを怠ると、小さな不具合が大きな障害につながることがあります。

  • 日常点検:ログのエラー傾向、ディスクの空き容量、証明書の期限切れ、バッチ処理の失敗などを確認し、兆候段階で対処します。

  • 最適化:不要ファイルの削除、データベースの統計更新やインデックス調整、キャッシュの見直しなどで、性能の低下を防ぎます。

  • 物理的な対策:サーバー室の温度や電源の安定、内部清掃、部品交換時期の管理を行い、過熱や老朽化による故障を防ぎます。

効果を安定させるためには、点検項目・閾値・担当者・頻度をあらかじめ決め、実施記録と振り返りをセットで運用することが大切です。

システムのアップデート

システムのアップデートは、セキュリティと性能を守るために欠かせない作業です。

  • 対象:OS、カーネル、ミドルウェア、ランタイム、アプリケーション、ドライバ、証明書など。

  • 進め方:検証環境での確認 → 段階的な本番適用 → ロールバック手順の用意。事前にメンテナンス時間を周知し、バックアップも取得しておきます。

  • 注意点:アップデートによって設定や動作が変わる場合があるため、互換性や依存関係の確認を忘れないこと。

過去の大規模インシデントの多くは「既知の脆弱性を放置したこと」が原因でした。大切なのは“一度きりではなく、続けて適用する仕組み”を作ることです。

バックアップの管理

バックアップは、障害やサイバー攻撃から事業を守る最後の砦です。単にデータをコピーするだけでなく、「取得・保管・復元テスト」を三位一体で行うことが重要です。

  • 方針:RPO(どこまで戻せれば良いか)とRTO(どれくらいで復旧したいか)を決め、完全・差分・増分を組み合わせて設計します。

  • 保管:同じサーバーに置かず、別筐体・別拠点・クラウドなど複数の場所に保存します。暗号化や権限の分離も必須です。

  • 復元訓練:定期的にリストア演習を行い、実際に戻せることを確認します。

「バックアップを取ったつもり」では意味がありません。検証ログを残し、手順を更新するところまでが仕事です。

サーバー保守の実施方法

サーバー保守は、システムの安定稼働とセキュリティを維持するために欠かすことのできない重要な業務です。サーバーの種類や環境、要件に応じて、適切な保守体制を構築する必要があります。

対応者の選択肢

サーバー保守の担当者を選択する際には、以下の3つの選択肢があります。

  1. メーカー・ベンダーによる専門保守サービスの活用

    サーバーメーカーやソフトウェアベンダーが提供する専門的な保守サービスを利用する方法です。メーカーやベンダーは、最新の技術情報やノウハウを持っているため、高い信頼性と品質のサービスを期待できます。ただし、費用がかさむことが欠点です。

  2. 社内エンジニアによる自社保守

    社内に専門的なスキルとリソースを持つエンジニアがいる場合、自社で保守を行うことができます。障害発生時に迅速な対応が可能なメリットがありますが、人件費や教育コストがかかるデメリットもあります。

  3. 専門業者への保守のスポット依頼

    短期間の保守作業や特定の問題への対応には、専門業者にスポット的に依頼するのが費用対効果に優れています。保守作業の内容と範囲を明確に定めておく必要があります。

選択の際は、自社の予算、スキル、システムの重要度などを総合的に勘案する必要があります。中小企業では、社内での対応が難しい場合が多いため、ハードウェア保守はメーカー、ソフトウェア保守は専門業者に外注するのが一般的な選択肢です。

外注のメリットとデメリット

サーバー保守を外部の専門業者に委託する場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 専門的な知識と経験を持つ業者に依頼できる

  • 障害発生時の迅速な対応が期待できる

  • 社内の人材不足を補完できる

  • 作業の一時的な人員増強に柔軟に対応できる

デメリット

  • 委託先との連携・調整コストがかかる

  • 機密情報の取り扱いにセキュリティリスクが存在する

  • サービスの内容や範囲が不明確な場合がある

  • ベンダーロックイン(特定業者への過度な依存)の可能性がある

外部委託を行う際には、サービス内容やSLA(サービスレベルアグリーメント)を事前に確認し、期待するサービスレベルを明示することが重要です。また、ベンダーロックインを避けるため、複数の業者と契約を結ぶことで柔軟性を確保できます。

効果的なサーバー保守の実践

サーバーの保守・運用体制を適切に構築することは、企業のITシステムを安定稼働させ、ビジネス活動を円滑に行う上で欠かせません。サーバーに障害が発生した場合、業務に多大な影響を及ぼすリスクがあるため、予防対策と迅速な対応が必要不可欠です。

中小企業に向けた提案

中小企業では人材や予算に限りがあるため、外部の専門業者をうまく活用しながらコストとサービス品質のバランスを取ることが大切です。

効果的なのは、ハードウェアとソフトウェアで役割を分けて外注する方法です。

  • ハードウェア保守はメーカーサポート

    部品交換や修理を迅速に行えるため、復旧の速さに強みがあります。

  • ソフトウェア保守は専門業者

    OSやアプリケーションの更新、セキュリティパッチの適用など、専門知識が必要な部分を任せることで最新の状態を維持できます。

このように役割を分担すれば、限られたリソースを有効活用しながらサーバーの安定稼働を確保することが可能です。 特にセキュリティ対策やシステム更新のような高度な分野は、外部の力を借りるのが現実的で安心です。

サーバーの保守・運用体制を適切に構築することは、企業のITシステムを安定稼働させ、ビジネス活動を円滑に行う上で欠かせません。サーバーに障害が発生した場合、業務に多大な影響を及ぼすリスクがあるため、予防対策と迅速な対応が必要不可欠です。

保守計画の重要性

サーバー保守を適切に行うには、単に外部のリソースを活用するだけでなく、長期的な保守計画を策定することが重要です。毎年、次のようなサイクルで保守計画を立案し、実施することをお勧めします。

  1. システムの現状の評価とリスク分析

  2. 次年度の保守作業の優先順位付け

  3. 保守スケジュールの立案

  4. 保守運用体制の確立と周知

  5. 保守作業の実施と見直し

このような計画的なアプローチにより、保守における優先事項を明確にし、システム停止時間を最小限に抑えることができます。保守作業の実施時期を事前に通知し、利用者への影響を軽減するなど、ビジネス継続性を高められるのが大きなメリットです。

さらに、障害発生時の対応手順を予め文書化しておき、社内で共有することで、緊急時におけるシステム復旧の迅速化が図れるでしょう。実際に障害が発生した際、手順書に沿って適切な指示を出すことで、混乱を最小限に抑えられます。

アウトソーシングの最適化

中小企業にとって保守業務をアウトソーシングすることは、コストとリソースの適正化の観点から有効な選択肢です。しかし、単一のベンダーに保守業務を完全に依存してしまうと、柔軟性が失われてしまうリスクがありますそこで推奨されるのが、保守業務を複数のベンダーに分散して委託するマルチベンダー方式です。

シングルベンダー方式

マルチベンダー方式

  • 一括して保守業務を任せるため、管理が簡素

  • ベンダーロックインのリスクが高い

  • 複数の選択肢があり、ベンダー交渉力が高まる

  • 個別の保守業務の最適化が可能

  • ベンダー管理がやや複雑化する

マルチベンダー方式では、ハードウェア保守とソフトウェア保守を別々のベンダーに任せることで、双方の強みを生かした効率的な保守体制が実現できます。また、個別の保守サービスの見直しや入れ替えが柔軟に行えるため、長期的にはコストとサービス品質の最適化が図れます。

ただし、複数ベンダーとの窓口の重複や情報の非一元化など、管理の複雑化にも注意が必要です。企業側で、保守業務のスコープと責任範囲を明確に定義し、各ベンダーとの綿密な連携体制を構築することが大切です。

外注先を選ぶ際のポイント

サーバー保守を外注する際は、費用や知名度だけで判断するのは危険です。信頼できるパートナーかどうかを見極めるには、以下の観点を確認することが大切です。特に、自社のシステム環境や運用体制に合っているかどうかを重視しましょう。

  • 実績・専門性

    対象となるOSや仮想化、クラウド環境の経験が豊富か。過去にどんなトラブルを解決した実績があるかも重要です。

  • 対応範囲と柔軟性

    障害対応だけに限定されず、定期運用や改善提案まで含めて支援できるか。突発的な依頼にも柔軟に対応できるかを確認します。

  • 費用対効果

    単純に価格が安いかどうかではなく、SLA(どれくらいで対応・復旧するか)や、実際に動く体制が伴っているかで比較しましょう。

  • セキュリティ体制

    ISO27001などの認証取得、権限管理のルール、ログ保全やデータの扱い方が明確に定義されているかどうかをチェックします。

  • 見える化

    監視ダッシュボードや月次レポートなどを通じて、作業内容やシステム状況を透明に共有してくれるかどうかも、安心につながります。

こうした観点を踏まえて複数の業者を比較すれば、自社に合った外注先を選びやすくなります。

サポート体制と対応時間

サーバー保守では、サポート体制と対応時間がサービスの安心感に大きく関わります。特にトラブルが起きたとき、どれだけ早く対応できるかは、ビジネスを止めないためにとても大切です。

たとえば、深夜にWebサイトがダウンした場合でも、すぐに復旧できなければ売上の損失や信頼の低下につながります。そうした事態を防ぐためには、事前に次のような点を確認しておくと安心です。

  • 監視体制

    24時間365日で監視しているかどうか。必要に応じて現地対応(オンサイト)も可能かを見ておきましょう。

  • 対応時間(SLA)

    サービスレベルアグリーメントに「重要な障害は2時間以内に対応開始」など、具体的な基準が書かれているかどうか。

  • 連絡手段

    電話、メール、チャットなど、自社にとって使いやすい方法が用意されているか。

  • 障害時の情報提供

    何かあったときに「状況・原因・対応方法・復旧の見込み」をすぐに共有してくれる体制か。

これらを満たしていれば、もしものときでも落ち着いて対応できます。特に、担当者と普段からやり取りがしやすいかどうかが、安心して任せられるポイントになります。

保守・運用のよくある疑問

サーバーの保守・運用に関して、よくいただく質問とその回答をまとめました。

Q1:サーバーの保守と運用は同じものですか?

A1:いいえ、異なります。運用は日々のシステム監視やリソース管理など、システムの日常的な安定稼働を目的とする業務です。一方、保守はハードウェアの修理・交換、ソフトウェアのアップデート、バックアップ管理、セキュリティ対策など、長期的な視点でシステムの障害防止や復旧、性能維持を目的とする業務です。運用と保守は密接に関係していますが、役割は明確に区別されます。

Q2:サーバー保守を怠るとどのようなリスクがありますか?

A2:サーバー保守を怠ると、システムのダウンタイム(停止時間)の増加、パフォーマンスの低下、データ損失、セキュリティ脆弱性の増加によるサイバー攻撃のリスク増大など、多岐にわたる問題が発生する可能性があります。これらの問題は、ビジネスの機会損失、顧客からの信頼失墜、最悪の場合は企業の存続に関わる重大な事態に発展する恐れがあります。

Q3:中小企業でもサーバー保守は必要ですか?

A3:はい、必要です。サーバー保守は企業の規模に関わらず、ITシステムの安定稼働とセキュリティ維持のために不可欠です。中小企業では専門知識を持つ人材が不足しがちですが、外部の専門業者に委託することで、コストを抑えつつ専門的な保守サービスを受けることが可能です。特に、ハードウェア保守はメーカー、ソフトウェア保守は専門業者に依頼する「ベストミックス」戦略が有効です。

Q4:サーバーのバックアップはどのくらいの頻度で取るべきですか?

A4:バックアップの頻度は、データの重要性や更新頻度によって異なります。例えば、毎日更新されるような重要なデータであれば、日次バックアップが推奨されます。週次や月次で更新されるデータであれば、それぞれの頻度に合わせたバックアップ計画が必要です。また、バックアップデータは、サーバー本体とは別の場所に保存し、定期的に復元テストを行うことが重要です。

Q5:サーバー保守の外注先を選ぶ際のポイントは何ですか?

A5:外注先を選ぶ際は、実績と専門性、対応範囲と柔軟性、費用対効果、そしてセキュリティ体制の4つのポイントを重視してください。特定のサーバー環境やOSに関する豊富な経験を持つ業者であるか、障害対応だけでなく定期メンテナンスなどもカバーしているか、コストとサービス内容のバランスが取れているか、そして情報セキュリティに関する認証を取得しているかなどを確認することが重要です。

まとめ

サーバー保守・運用は安定したサービス提供と顧客満足度の向上には欠かせない作業であることが分かります。 サーバーの健全性を維持するには、専門的な知識と体制が不可欠です。

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