ものづくり補助金でWebサイト・ECサイトは作れる?2026年の新制度で対象になる経費と考え方

目次

新しい事業を始めるときに、WebサイトやECサイトもあわせて作りたい。そんなときに検討したいのが、2026年度に始まった新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。ただし、Webサイトの費用だけでは申請できず、事業計画の中での位置づけが問われます。Webサイト・ECへの投資を、この補助金でどう考えればよいかをご説明します。

この記事でわかること

  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の3つの枠と、主な条件

  • WebサイトやECの費用が、どの経費として扱われるか

  • Webサイト・ECが活きる事業計画の考え方と、その例

  • 申請前に確認したいことと、外部に相談したい範囲

新規事業のWebサイトやECは、事業の売上をつくる仕組みそのものです。見た目を整えるだけでなく、誰にどんな価値を届け、どうやって購入や問い合わせにつなげるかまで設計して、はじめて投資としての意味を持ちます。

補助金を使った新規事業のWebサイト・EC投資を、事業計画と設計の両面から考えるためのポイントを、UXデザインの設計力と、ブランド構築支援の表現力の高さを強みにするWeb制作会社株式会社デパートがまとめました。

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Webサイト・ECは新事業の売上をつくる仕組みとして計画に入れる

この補助金でWebサイトやECに投資するなら、新しい事業の売上をどうつくるかという計画の一部として位置づけるのがポイントです。

補助金の対象になるのは、新しい事業のPRや販売に使うWebサイトです。会社全体を紹介するコーポレートサイトのリニューアルは、対象になりません。

審査で見られるのは、新しい事業でどれだけ売上や付加価値を伸ばせるかです。WebサイトやECも、その数字を実現するための手段として説明できれば、事業計画の説得力が増します。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の3つの枠と主な条件

2026年度から、これまでの新事業進出補助金とものづくり補助金が一つになりました。中小企業が新しい製品・サービスの開発や、新しい市場への進出に取り組むときの設備投資などを支援する制度です。目的に合わせて、3つの枠から1つを選んで申請します。

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枠

支援する取り組み

補助上限(賃上げ特例の適用時)

事業の実施期間

革新的新製品・サービス枠

技術的に新しい製品・サービスの開発

最大2,500万円(3,500万円)

交付決定から10か月以内

新事業進出枠

既存事業とは異なる市場・高付加価値事業への進出

最大7,000万円(9,000万円)

交付決定から14か月以内

グローバル枠

海外市場の開拓(輸出)に向けた国内体制の強化

最大7,000万円(9,000万円)

交付決定から14か月以内

補助上限は従業員数によって変わり、補助率は枠や企業規模によって1/2〜2/3です。

3つの枠に共通する条件

どの枠でも、事業計画の期間中に次の数字を達成する計画を立てます。

  • 付加価値額(営業利益・人件費・減価償却費の合計)を、年平均4.0%以上増やす

  • 従業員1人あたりの給与支給総額を、年平均3.5%以上増やす

  • 事業所内の最低賃金を、地域の最低賃金より30円以上高くする

WebサイトやECへの投資も、これらの数字にどうつながるのかを説明できるようにしておきましょう。

Webサイト・ECと相性のよい枠

新しい顧客や市場に向けて、ECで商品を売る、予約や申し込みをWebで受けるといった事業なら、新事業進出枠が中心になります。新しいサービスそのものをWeb上で提供する場合は革新的新製品・サービス枠、海外向けの越境ECを含む輸出の取り組みならグローバル枠も候補です。

参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開(ミラサポplus)

WebサイトとECの費用はどの経費として扱われるか

WebサイトやECにかかる費用は、内容によって入る経費の区分が変わります。区分ごとに上限や必要な書類が違うので、見積もりの段階で整理しておきましょう。

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費用の内容

主な経費区分

気をつけたい点

新事業のPR用Webサイト・LPの制作

広告宣伝・販売促進費

上限は1年あたりの売上見込みの5%。金額にかかわらず複数社の見積もりが必要

ECのカート・決済・在庫連携、予約や会員の仕組みなど、事業専用のシステム開発

機械装置・システム構築費

100万円(税抜)以上なら、要件定義書などの提出が必要

補助事業専用で使うクラウドサービス

クラウドサービス利用費など

補助事業の期間中の分だけが対象

会社全体のPR、既存事業の広告、公開後の保守

対象外

見積書で、補助対象の費用と分けておく

Webサイトだけでは申請できない

この補助金では、機械装置・システム構築費(新事業進出枠とグローバル枠では建物費でも可)を必ず含める決まりがあります。PR用のWebサイトだけでは申請できないので、事業に必要な設備やシステムとセットで計画を立てましょう。ECの仕組みを事業専用のシステムとして開発する場合は、それ自体が機械装置・システム構築費になることもあります。

どちらの区分に入るか迷ったら

ECサイトのように、PRと販売の両方の役割を持つものは、どちらの区分に入るか判断に迷うことがあります。見積書の内容によって扱いが変わるため、申請前に事務局へ確認しておくと安心です。

Webサイト・ECが活きる事業計画の3つのパターン

WebサイトやECが事業計画の中で自然に位置づけられるのは、どんなケースでしょうか。よくある3つのパターンを例にご紹介します。

パターン1 BtoBの製造業が一般のお客さま向けに直販を始める

たとえば、企業向けに部品を作ってきた会社が、その技術を活かした生活用品を開発し、ECで一般のお客さまに直接販売するケースです。新しい顧客に新しい商品を届けるため、新事業進出枠が候補になります。

この場合、ECサイトは売上をつくる中心的な仕組みです。商品の魅力やブランドの考え方を伝えるページ、購入までの導線、決済や在庫の仕組みまで、事業計画とセットで設計します。

パターン2 地域のサービス業がオンライン予約や会員制の新サービスを始める

たとえば、店舗型のサービスを提供してきた会社が、オンライン予約と会員制の定期サービスを新たに始めるケースです。予約や会員管理の仕組みはシステム構築費、サービスを知ってもらうためのWebサイトは広告宣伝・販売促進費として考えます。

パターン3 国内向けの商品を越境ECで海外に販売する

たとえば、国内で販売してきた食品や雑貨を、海外のお客さま向けにECで販売するケースです。輸出に向けた取り組みなので、グローバル枠も候補になります。多言語のWebサイト、海外向けの決済や配送の仕組みなど、国内向けとは違う設計が求められます。

どのパターンでも押さえておきたいこと

3つのパターンに共通するのは、新しい顧客が誰で、Webサイトでどう集客し、購入や申し込みにつなげるかを計画に書けることです。ECの売上見込みも、アクセス数や購入率などの根拠を添えておくと、審査で伝わりやすくなります。

投資する前に確かめたい費用・体制・リスク

補助額が大きい制度だからこそ、自社にとって無理のない計画かどうかを先に確かめておきましょう。

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判断の軸

確認すること

判断の目安

費用

投資の総額と、自己負担・立て替えの金額

補助下限を超える規模の投資を、自社で支払えるか

スケジュール

採択発表と事業の実施期間

新事業の開始時期に、Webサイト・ECの公開が間に合うか

体制

EC運営や更新、報告を担う人

公開後の受注・発送・問い合わせ対応まで回せるか

リスク

賃上げなどの数値目標と、返還の条件

目標に届かなかった場合も、経営に無理がないか

費用:投資の規模が大きくなる

新事業進出枠の補助下限は750万円です。補助率が1/2の場合、補助金で750万円を受け取るには、少なくとも1,500万円の投資が必要になります。WebサイトやECだけでなく、設備やシステムを含めた事業全体の投資として考えましょう。補助金は後払いなので、いったん全額を自社で支払う点も忘れずに。

スケジュール:公開は早くても2027年の半ば以降

第1回公募は、申請の締切が2026年10月30日、採択の発表が2027年1月頃の予定です。交付決定を受けてから制作を始めるため、Webサイト・ECの公開は早くても2027年の半ば以降になると考えておきましょう。

体制:ECは公開してからの運営が本番

ECは、公開したあとに受注、発送、お客さまからの問い合わせ対応、商品ページの更新が毎日続きます。既存事業と同じ人数で回せるのか、新しく人を採用するのかも、事業計画に含めておくと安心です。

リスク:数値目標に届かないと返還もある

給与支給総額などの目標に届かなかった場合は、補助金の一部を返還することになります。Webサイト・ECの売上見込みは、楽観的になりすぎないよう、根拠のある数字で計画しておきましょう。

補助金でカバーできないWebサイト・ECの課題

補助金で支えてもらえるのは、決められた期間の中での投資です。新規事業のWebサイト・ECを成功させるには、補助金の外側にある課題にも目を向けておきましょう。

公開したあとの集客

ECは作っただけでは売れません。検索で見つけてもらうための対策、Web広告、SNSでの発信など、公開後に人を呼ぶための取り組みが続きます。補助事業の期間が終わったあとの集客費用は、自社の予算で用意しておく必要があります。

既存のWebサイトとの関係

補助金の対象は新しい事業のWebサイトなので、会社のコーポレートサイトとは別に作ることが多くなります。そのとき、ドメインやデザイン、問い合わせ先をどう分けるかを決めておかないと、お客さまが迷ったり、ブランドの印象がばらばらになったりします。新しい事業のWebサイトと、会社全体のWebサイトの役割分担を先に決めておくと、公開後の運用もスムーズです。

ECを回すための業務の仕組み

補助金でカートや在庫管理のシステムは作れても、受注から発送、問い合わせ対応までの業務の流れは、自社で組み立てる必要があります。システムの設計と業務の設計を並行して進めておくと、公開直後の混乱を防げます。

申請前のチェックリスト

事業計画、Webサイト・EC、手続きの3つに分けてまとめました。社内での確認や、制作会社との打ち合わせにご活用ください。

事業計画

  • 新しい事業の顧客と商品・サービスが、既存事業とどう違うかを説明できる

  • 付加価値額や給与支給総額の目標を達成する道筋がある

  • 補助下限を超える投資を、自己資金や借入で立て替えられる

Webサイト・EC

  • Webサイト・ECが、新しい事業の売上にどうつながるかを書ける

  • 売上見込みに、アクセス数や購入率などの根拠がある

  • 費用を、広告宣伝・販売促進費とシステム構築費、対象外に分けて見積もっている

  • 公開後の集客と運営の担当、予算が決まっている

手続き

  • GビズIDプライムを取得している

  • 一般事業主行動計画を公表している

  • 契約や発注は、交付決定のあとに行う段取りになっている

特に「売上見込みの根拠」は、審査でも、公開後の振り返りでも役に立ちます。制作会社と一緒に、集客から購入までの流れを数字で組み立てておくと安心です。

自社で進める範囲と外部に相談したい範囲

事業計画書は申請する会社自身が作るもので、外部に作成を任せることはできません。そのうえで、専門家の力を借りたほうが進めやすい部分もあります。

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進めること

自社で担うこと

相談先と相談したいこと

事業計画

新しい事業の内容、数値目標、体制を決めて書く

認定経営革新等支援機関、よろず支援拠点:計画の妥当性や数字の根拠の確認

Webサイト・ECの設計

新しい事業でWebに担わせる役割を決める

Web制作会社:必要な機能、ページ構成、売上見込みにつながる導線の設計

見積もり

複数社への依頼と比較

Web制作会社:経費区分ごとに分けた見積書、要件定義書の作成

公開後の運営

受注・発送・問い合わせ対応、日々の更新

Web制作会社:アクセス解析と改善の進め方

Webサイト・ECのどこまでを補助対象として計上できるか、売上見込みをどう組み立てるかは、事業計画とWeb制作の両方を見ながら判断する必要があります。申請前の段階で、事業計画の内容をWebサイト・ECの要件に落とし込んでおくと、交付決定後の制作にもスムーズに入れます。

よくある質問

Q. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは何ですか?

A. 2026年度に、新事業進出補助金とものづくり補助金が統合されてできた補助金です。中小企業が新しい製品・サービスを開発したり、新しい市場に進出したり、輸出に取り組んだりするときの設備投資などを支援します。革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つから、目的に合う枠を選んで申請します。

Q. ものづくり補助金でECサイトは作れますか?

A. 新しい事業の販売に使うECであれば、対象になる可能性があります。PR用のページは広告宣伝・販売促進費、カートや在庫連携などの事業専用の仕組みは機械装置・システム構築費として扱われるのが一般的です。ただし、ECの費用だけでは申請できず、設備やシステムを含めた事業計画の一部として計上します。

Q. コーポレートサイトのリニューアルにも使えますか?

A. 会社全体のPRを目的としたコーポレートサイトのリニューアルは、対象外です。対象になるのは、補助事業で取り組む新しい製品・サービスのPRや販売に使うWebサイトです。コーポレートサイトの中に新事業のページを作る場合は、そのページの費用だけを分けて計上できるかを、事務局に確認しておきましょう。

Q. ECのサービス(SaaS)を使ってECを作る場合も対象になりますか?

A. 補助事業専用で使うクラウドサービスの利用料は、補助事業の期間中の分が対象になる場合があります。ECサービスの上に独自のデザインや機能を作り込む費用は、内容に応じて広告宣伝・販売促進費やシステム構築費として扱われます。月額料金と制作費を見積書で分けておくと、判断がしやすくなります。

Q. デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)との違いは何ですか?

A. デジタル化・AI導入補助金は、事務局に登録されたITツールの導入を支援する制度で、Webサイトの制作費は対象外です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、新しい事業への設備投資を支援する制度で、その事業のPRや販売に使うWebサイト・ECも計画に含められます。補助額も大きく、新しい事業に本格的に投資する場合はこちらが候補になります。

新規事業のWebサイト・ECは売上計画とセットで設計する

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でWebサイト・ECに投資するなら、新しい事業の売上をつくる仕組みとして、事業計画と一緒に設計するのが近道です。Webサイトだけを切り出して考えると、補助金の対象にならなかったり、公開後に売上につながらなかったりします。

ここから確認しておきたいのは、次の3点です。

  1. 新しい事業の顧客と、Webサイト・ECで届ける価値がはっきりしているか

  2. Webサイト・ECの費用を、経費区分ごとに分けて見積もれているか

  3. 公開後の集客と運営を、誰がどの予算で担うか決まっているか

事業計画の数字とWebサイト・ECの設計をつなげる作業は、事業とWeb制作の両方を見ないと進めにくいところです。申請前の段階で制作会社と要件を整理しておくと、補助金の手続きから公開後の運営まで、一つの計画として進められます。

補助金の制度全体については、Webサイト制作に使える補助金・助成金2026完全ガイドで整理しています。

参考資料

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